「男性に負けない」意識映す

明日香は制服のある会社の事情も聞こうと、企業向け制服を手がけるオンワード商事(東京都江東区)も訪れた。商品部部長の吉田哲也さん(46)は「2000年代に入り、化粧品販売業や飲食業などでパンツスタイルの注文が増えました」と話す。「実用性ですか」と明日香が聞くと「制服は1990年代に廃止が相次ぎましたが、最近、企業イメージや従業員の負担軽減のため復活しています」。

明日香は制服にパンツスタイルを採り入れた足利銀行を訪ねた。同行は05年に女性職員の制服を廃止後、10年に再導入した。プロジェクトチームをつくり、制服のデザインや色などを検討するため職員の声を集めたところ、20~30代はスカート派が圧倒的に多いが、40代以上になるとパンツ派も増えてきたそうだ。

そこで女性職員がスカートとパンツの2種類から制服を選べるようにした。人事部長代理の荒井京美さん(38)は「脚を見せたくない、冬は寒いなどの理由でパンツスタイルを求める声がありました。実用性に加え、長く働き続ける女性が増えているからでしょう」と教えてくれた。

公益財団法人日本ユニフォームセンター(東京都港区)が99年と09年に行った制服に関する企業調査では、スカートの採用が大半を占めるものの、10年間に着用率は10ポイント前後低下し、ズボンやキュロットの割合が上昇していた。

「仕事着のカジュアル化や働き続ける女性の増加が影響したようです」と明日香が説明すると、「そんなに単純だろうか。もっと賢く着こなしているんじゃないか」と所長。再び明日香は街に出た。

明日香は文化学園大学を訪れ、服装の印象管理について研究する助教の大石さおりさん(37)に女性の服装選びの基準を尋ねると「外的要因だけでなく、内的要因もあるのです」と説明し始めた。

女性の服装の決定要素は大きく4つあるという。肌の露出度合いなどを制限する「宗教」、衣料品への支出を左右する「景気」、時代になじむ色やデザインが決まる「流行」、社会的性差「ジェンダー」だ。日本では宗教の影響を受けにくいため、実質的に3要素で決まるという。