オンラインで即入手 楽譜アプリが演奏練習を支援
演奏位置表示や譜めくりも自動で
タブレット(多機能携帯端末)を使って、本や音楽などを楽しむことが増えてきた。所有する書籍をスキャナーで電子データに変え、タブレット上で読む「自炊」にいそしむ人もいる。そんな中、電子化が進んでいるのが「楽譜」。オンラインですぐ入手できる上、保管場所に悩んだり、何冊も持ち歩いたりする必要がなくなる。専用アプリを使えば、より音楽に親しめる。
楽譜を表示するiPad(アイパッド)向けアプリが充実しているので紹介しよう。
画面上に矢印表示
演奏者の「お供」として重宝するのが練習支援機能。ファン・タップの「フェアリー」は現在の演奏位置を楽譜上に矢印で表示、演奏が止まると矢印も止まるようになっている。ピアノや電子ピアノの演奏音の音程、音階をリアルタイムで判断し、楽譜のどの部分に該当するかを見つける仕組みを利用する。
フェアリーを利用する大阪府在住の女性は「自分の練習向けのほか、子どもにアニメの曲を弾いて聞かせるのに使う。どこを弾いているか目で見て分かるのが楽しいらしく、自分も右手だけ弾いてみたいと音楽に興味を持つようになった」と話す。
ヤマハ「EZ-J220 Page Turner」とローランド「ピアノ・パートナー」の両アプリはパートごとの音のオンオフが可能で、「右手パートだけ音を鳴らして左手の練習をする」など弾き手に合わせた練習ができる。
河合楽器製作所の「PDFミュージシャン」とプラスアドの「piaScore」は楽譜に直接書き込める機能がある。間違いやすい箇所や強調して弾く箇所を記録しておくわけだ。フェアリーの上位版アプリは、オンラインストレージサービスの「ドロップボックス」と連携しており、同じアプリの利用者であれば書き込み内容を共有できる。ピアノ教室の先生がレッスン中に楽譜に書き込んだ内容を、生徒が家で見返すといった使い方を想定している。
楽譜アプリのもう一つの便利な機能は「自動譜めくり」。表示している楽譜のページの終わりに演奏が近づくと、自動でめくってくれる機能のことだ。紙の楽譜だと手でめくる瞬間に演奏が中断してしまう。この不便を解消できる。今回取り上げた5種類のアプリはいずれもこの機能を備える。
譜めくりの仕組みは各アプリで異なる。piaScoreはカメラで演奏者の動きを認識し、手や顔を左に振るといった動作でページをめくれる。
ヤマハのアプリは、電子ピアノの自動演奏機能を使って出る演奏音に連動して譜めくりを行う。具体的には自動演奏がページの終わりにさしかかると、人間にはほとんど聞こえない高周波の音を電子ピアノが出し、譜めくりのタイミングをアプリに知らせる。ローランドの場合、自動演奏中に無線LANルーターを介してアプリと電子ピアノが通信し、譜めくりする指示をアプリが認識する。
どんな曲か実演
「新たに弾いてみたいけど、どんな曲かイメージできない」。楽譜アプリはそんな悩みにも応えてくれる。PDFミュージシャンは、楽譜データを解析し、音符にしたがって自動でアプリが演奏する。演奏音はグランドピアノやバイオリン、女性ボーカルなど30種類から選べる。「合唱曲を選ぶ場合など、どんな曲か手軽に知るのに向いている」(河合楽器製作所)という。
ヤマハとローランドのアプリは、それぞれが販売する特定機種の電子ピアノとセットで自動演奏する。楽譜はiPadに表示し、演奏は電子ピアノが行う仕組みだ。
楽譜データは有料・無料にかかわらず様々にあるので探すとよい。楽譜アプリで、練習に変化を取り入れてはいかがだろうか。
(電子報道部 松浦龍夫)
[日本経済新聞夕刊2013年6月13日付]
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