磁気テープなぜ復活? 生産量3年連続プラスに

震災で信頼性に再評価

江尻さんはプラスチック製の見慣れない磁気テープ(LTO)を見せてくれた。外見は厚めの文庫本サイズ。中には幅約1.3センチメートル、長さ800~1200メートルの細長い磁気テープが巻かれている。カセット1本でブルーレイ・ディスク約100枚分のデータを保存できる。「データ保存用はハードディスクドライブ(HDD)が主役ですが、企業や自治体は磁気テープも再評価しています」と江尻さん。

企業の需要が伸びているデータ用磁気テープ(東京都世田谷区のオラクル・ソリューション・センター)

章司が「磁気テープは音楽・映像用に一定量使われていますが、データ保存用に需要が伸びています」と報告すると、所長が問いかけた。「なぜ今、見直されているんだ」

再び調査に出た章司がIT大手の日本オラクルを訪ねると、システム事業統括PMO本部長の宮坂美樹さん(44)が質問に答えてくれた。「磁気テープを使った記録システムの売れ行きは堅調です。11年3月の東日本大震災をきっかけに問い合わせが大きく増えました」

震災後、全国の自治体や企業は大災害後も仕事を続けられるようにBCP(事業継続計画)を見直した。被災地の自治体ではデータが失われ、復旧や復興に手間取ったケースがあったので、重要データの保存方法も課題になった。

「データのバックアップ用として優位性が評価されたようです」と宮坂さん。磁気テープは持ち運びが簡単で、他の記録メディアに比べコストが安い。目的のデータを探す時間は遅くなるが、大量のデータを移し替えるスピードは速く、停電でもデータは失われないなどの特性がある。

「実際に使っている人にも聞いてみよう」。章司が静岡県の藤枝市役所を訪ねると、情報政策課の岡村美基男さん(33)が出迎えてくれた。「磁気テープだと運用コストも安いのでコストに敏感な自治体にはありがたいですね」