神の島 沖ノ島 藤原新也、安部龍太郎著自然への畏怖に2人が迫る

2013/6/6
(小学館・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

安部龍太郎の所謂(いわゆる)直木賞受賞第一作は、前代未聞、藤原新也と合作のこの一巻である。

 作品は、冒頭の「海神」なる序詞において、沖ノ島を「人間が自然に一切関与してはならない世界でも例のない島」として定義。原発事故などが世界を汚染し続ける現在、「自然に対する禁忌という想念」が、突如、神聖なるものとして屹立(きつりつ)している旨、記している。

 藤原新也の「沖ノ島航海録」も、4編の掌編を含む安部龍太郎の「古代宗像一族の物語」も、双方、この島の土俗的な風土や自然崇拝、或(ある)いは歴史に対する畏怖を語っている点では共通する。

 しかしながら、門司港で育ったノンフィクション作家の藤原が、少年時の体験から、いまや古代の航海者と一体になり、さらに、この神の島の深層に迫っていくのに対し、歴史作家の安部が、『日本書紀』等を駆使し、島の史実=ノンフィクションに迫っていく、という、図らずも各々(おのおの)の立場を逆転させてしまったかのような構図も面白い。

 そして両者の文章の間にあるのがとてもことばでは語り尽くせない、島の光景と国宝の写真。神の気に打たれるということがあるならば、それがこれだろう。

★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2013年6月5日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

神の島 沖ノ島

著者:藤原 新也, 安部 龍太郎
出版:小学館
価格:2,940円(税込み)


今こそ始める学び特集
今こそ始める学び特集