心の不調、定期的な「ストレス診断」で早期発見へとへと・不安…当てはまる?

職場などで強いストレスを何度も感じると、心に不調を来してうつ病などを発症するケースもある。ストレスの度合いを本人が定期的にチェックしていれば、心身が限界を超える前に対処することも可能になる。最近はストレス診断を手掛ける企業も増えており、心の健康度をチェックしやすくなったが、「診断を受けっぱなしにするのではなく、適切なカウンセリングと組み合わせることが重要だ」と専門家は指摘する。

「年度末の工事の忙しさが続いており、残業も多く疲れていた」。今年3月、東京都内の建設関連企業で浮かぬ表情で話す40代男性社員の話に、産業医を務める長岡功・順天堂大学教授は耳を傾けていた。「恒常的というよりは一時的に強いストレスがかかってつらいと感じている」と判断、しばらく様子を見ることにした。

この会社では食品の機能評価などを手掛けるティーティーシー(TTC、東京・渋谷)が作成したストレス診断票「働く人のこころとからだの早期健康チェック」を採用、2月に社員約60人に実施した。点数の低かった人には産業医が個別に声をかけ、希望者と面談した。長岡教授は「診断票の結果をもとに具体的に話してくれる人が増え、心身の状態を把握しやすくなった」と話す。状態が悪い人に専門機関受診を勧めやすくなるとみている。

診断票を作成したのは産業ストレスに詳しい下光輝一東京医科大学名誉教授や津田彰久留米大学教授ら9人の専門家。「からだ」「こころ」「仕事とまわりの環境」「生きる意味」の各側面から30項目の質問に答える。質問は健常者、うつ病患者、線維筋痛症患者など働いている約6000人を対象に実施した評価テストをもとに作った。

■うつ病の患者70万人

TTCの山本哲郎社長は「働く人が自分のストレスの状態を客観的に知ることができる。健康診断のように定期実施すれば変化も分かり、対応しやすくなる」と訴える。こうしたストレス診断サービスは、近年の職場のストレス対策を重視する流れの中で、徐々に増えている。

厚生労働省の2011年の調査によると、うつ病の患者数は約70万人。だが実態はもっと多いとの指摘もある。日本うつ病学会理事長の神庭重信・九州大学教授は「日本全体でうつ病患者は700万人程度に達するのではないか」と話す。心の不調を感じても受診しなかったり、自覚しないまま症状を悪化させたりして、重症になってから受診するケースも多いからだ。

国立社会保障・人口問題研究所による09年の推計では、自殺やうつ病による社会的損失は年間で2兆6700億円を超える。11年度の精神障害の労働災害の請求件数は1272件、認定件数は325件。近年は右肩上がりで増えている。厚労省の調査では、何らかのメンタルヘルスケアに取り組む企業は11年で43%。ただ社員のストレス状況まで調べているのはその約3分の1にとどまる。

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