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「限定正社員」どんな制度? 解雇ルールで労使対立

2013/5/28 日本経済新聞 プラスワン

非正規は働く人の35%を占め、2~3割が正社員希望。章司が「限定正社員が受け皿になりますね」と言うと、松浦さんは「急速に増えるとは思いませんが、優秀な人材が集まらないと危機感を持つ企業から導入が進むでしょう」と答えた。

「でも、依頼人は『クビにしやすくなる』と心配していたぞ」。章司は経営者側の本音を探ろうと、経団連を訪ねた。労働法制本部主幹、鈴木重也さん(44)は「誤解があるようですが、正社員を解雇しやすくする意図はありません」と強調した。「正社員から限定正社員に転換するには本人の同意が必要です。狙いは解雇ルールの緩和ではなく“透明化”です」

鈴木さんは「解雇が有効か無効かは最終的に裁判所が判断するので不透明なのです」と説明する。例えばある事業所で非正規社員を限定正社員にした後、経営環境が悪化して事業所を閉鎖したとする。契約で働く場所をその事務所に限定していれば正社員より解雇しやすいはずだが、裁判所がどう判断するか予測が難しいという。「正社員の解雇ルールとの違いがはっきりすれば、非正規を限定正社員にする経営者が増えるはずです」と言う。

「依頼人は心配しすぎかも」。ところが、労働組合の団体、連合を訪ねると、副事務局長の安永貴夫さん(51)が「労働者保護のルールを緩めようとしています」と反論した。競争力会議では経営者が、労働契約法に「解雇自由」の原則を盛り込むことなどを提案した経緯がある。

「正社員に『転勤したくなければ限定正社員になってください』と持ちかけ、みんながハンコを押したところで工場を閉めて解雇するような例が出るかもしれません」。非正規の人が限定正社員になることについては利点があることを認めながらも「政府の会議で労働者の代表を入れずに議論するのはおかしい」と不信を募らせる。

「労使で受け止め方に違いがあるようだ」。頭を整理しようと、日本大学准教授の安藤至大さんを訪ねると「主張する人によって非正規の雇用安定、解雇規制の緩和、雇用流動化など思惑が異なり、混乱していますね」と指摘した。日本の雇用を巡っては労使双方に誤解が多いという。

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