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「限定正社員」どんな制度? 解雇ルールで労使対立

2013/5/28 日本経済新聞 プラスワン

 「政府が議論している“限定正社員”とはどんなものですか。クビにしやすくなると聞きました」。不安げな中年男性が事務所を訪れた。あくびをしていた探偵、松田章司が「それは困りますね」と、所長の視線を気にしながら飛び出した。

■転勤なし、仕事変わらず

産業競争力会議などで雇用改革案の議論が始まっている(14日、首相官邸)

 「限定正社員」は、今春、政府の産業競争力会議や規制改革会議でルール整備が提案された。安倍晋三首相の経済政策“アベノミクス”の成長戦略の一つらしい。

 「正社員と何が違うのかな」。章司は規制改革会議で雇用分野のとりまとめ役を務める慶応大学教授の鶴光太郎さんに聞いてみた。

 「普通の正社員は転勤や残業、職種の変更を受け入れないといけませんよね。これに対し仕事や勤務地などを契約で限定するのです」と鶴さん。派遣社員やパートなどと違い無期雇用で、一般に待遇は有期より良い。銀行や小売業など大企業の約半数が導入している。

 鶴さんは「長時間の残業など働き方を巡る問題の多くは正社員の仕事が“無限定”なことで生じている」と指摘する。一方、転勤や残業がない限定正社員は子育てなどと両立しやすく、仕事が変わらないので専門性も高めやすい。

 章司は労働政策研究・研修機構の統括研究員、浜口桂一郎さん(54)に議論が本格化した背景を聞いた。浜口さんは「4月に施行された改正労働契約法がきっかけです」と説明した。企業は同じ職場で5年を超えて働く契約社員やパートが希望すると、無期雇用に切り替えなければならなくなった。「業務や職場はそのままなので限定正社員になります。こうした働き方が増えることが見込まれ、ルールの議論が始まりました」

 次に会ったニッセイ基礎研究所の主任研究員、松浦民恵さん(47)は「働き方に良しあしはありませんが、現在の非正規雇用は職業能力を高めにくい。増え過ぎるのは望ましくありません」と指摘した。正社員に比べ交渉力が弱く、仕事に見合った賃金ももらえていないという。

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