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エコノ探偵団

「限定正社員」どんな制度? 解雇ルールで労使対立

2013/5/28 日本経済新聞 プラスワン

■すれ違う思惑

「まず、正社員は解雇できないというのは間違いです」。例えば「仕事ができない」ことを理由にした解雇は可能。経営難で仕事がなくなった場合も、「雇い続ける努力をした」「組合と話し合った」など企業側に求められる条件はあるが解雇できる。

「ただ、日本では欧米と異なり、会社は正社員を職種や勤務地などを自由に変えられる約束で雇うことが多い。その分、クビにする前に様々なチャンスを与えなければならないのは当然で、ルール自体が厳しいわけではない」と安藤さん。裏返すと、契約で勤務地や仕事を決めておけば、解雇を避けるため配置転換など会社が努力しなければならない範囲は狭まる。章司は「暗黙の了解で労使があいまいにしていた部分が多い雇用契約が曲がり角に来ているんだな」と思った。

最後に章司は日本総合研究所のチーフエコノミスト、山田久さん(49)を訪ね、「限定正社員を増やして雇用を流動化すれば、もっと成長産業に人が移りますか」と聞いた。山田さんは「誤解がありますが、かなり流動化は進んでいるのです」と指摘した。大企業は希望退職などで調整している。中小企業では正当な理由や手続きなしで解雇されることも多く、こちらはむしろ抑制策が必要だという。

「そもそも景気が良くないと人は転職できません」。限定正社員などのルールを変えただけでは効果が限られるという。「重要なのは業績が良いときに成長分野に人を移せるか。そういう時期は希望退職を募りにくいので、官民で公的な人材派遣会社を作り、出向などの形で成長産業に送り込むなど、別の工夫が必要かもしれません」という。

事務所に戻った章司が腰を下ろそうとすると、ネコの三毛が章司のイスを占領していた。「勤務地がこの場所と決まってるから三毛は限定社員なのかな」。章司がつぶやくと、所長夫人の円子が「もっと流動化してるみたいよ。午前中はお隣さんに雇われてるみたいだもの」

(松林薫)

[日経プラスワン2013年5月25日付]

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