季節の変わり目、ひどくなる腰痛は「気象病」気圧・温度変化が一因

昼と夜の気温差が激しい季節の変わり目や梅雨時のじめじめした日、腰痛や関節の痛みがひどくなると訴える人がいる。こうした時期は心筋梗塞や脳卒中、急性虫垂炎などの患者も増えると医師の間でも語られ「気象病」とも称される。名古屋大学の研究では、天気と病気の関係が動物実験から明らかになってきた。正しく理解して、体調の変化に備えておきたい。

■米や独では予報も

名古屋大学の温度や気圧を変えられる大型装置

当日の気圧配置や気温によって腰や膝の慢性痛がひどくなる。そんな経験は海外でも広く知られている。天気と病気の関係に詳しい名古屋大学環境医学研究所の佐藤純・准教授は「米国やドイツでは健康気象予報サービスというものがあります」と解説する。気象の変化をもとに、おなじみの天気予報と同じように痛みへの警戒を数段階で表示するという。

名古屋大は、パイロットの体調を管理する航空医学や登山をする人の健康を調べる登山医学を長らく研究してきた。キャンパス内には気温や気圧を自由に調節できる実験施設がある。この施設が天気と病気の不思議な関係を解き明かす数多くのヒントを与えてくれる。

ある日、手と腕にしびれと強い痛みが残る患者が施設を訪れた。1カ月前に交通事故にあったという。「手がいつもより痛いときがあるのです。そんなときは、頭痛や耳鳴りもひどい」と訴えた。

実験施設に入ってもらい、気圧を通常よりも30ヘクトパスカルほど下げた。下げ幅は、前線が通過したときに起こりえる気圧の変化に相当する。10分ほどかけて気圧を下げてその後、15分間気圧を低いままに設定。その後、10分かけて通常の気圧に戻した。

その結果、気圧を下げはじめると指の深い部分の痛みが増し、気圧を戻すと和らいだ。頭痛は気圧低下とともに強まり、気圧を戻した後も痛みが残っていたという。痛みの原因は気圧の変化だった。本人も雨が降る1週間前から前日にかけて痛みが悪化すると感じていたが、科学的に裏付けた。過去に骨折して慢性痛に悩んでいた別の患者の場合も、気圧の低下によって痛みが増した。

人では思い込みや錯覚もあるので、関節炎や座骨神経損傷になったネズミを使って実験をした。

気圧は30ヘクトパスカルほど下げて、気温はセ氏22度から15度に徐々に変えて調べた。

足の裏を細い棒で押して、痛みで足を持ち上げる回数から痛みを数値化した。その結果、いずれも圧力を下げたり、気温を下げたりすると、ネズミは足を上げる回数が増えて痛みが増していることが明らかになった。