食事はホルモンバランスを保つのにも貢献している。最近の研究で、人では時間帯により働くホルモンが異なっているのが分かった。これらのホルモンの働きを活性化するのが食事だという。
朝食は1日のスイッチを入れる、昼食は消費エネルギーを補填する、夕食は体を作る――。蒲池教授は意義を強調する。特に重要なのは朝食。「朝抜くと血糖値を下げるインスリンが作用しにくくなり、体を動かしにくくなる。肥満にもつながる」と説明する。人間総合科学大学の小林特任教授によると、夜勤などで昼に起きる人では最初の食事が朝食に相当するという。
しかし朝昼晩と食事を取ることがよいといっても、ただ食べるだけでは意味がない。「深夜まで深酒して高カロリーの食事をとり、それで3食というのはナンセンス。質の高さが重要だ」(白澤教授)
質を高めるにはどんな工夫が必要か。まずはバランスやカロリー。国がまとめた「食事バランスガイド」などを参考に、腹八分目を心がける。夜あまり遅い時間に食べないなど、規則正しく取るのも大切だ。これを基本に毎日の食生活を実践しよう。ただ最初から完璧さを求めず、できるところからやるのがよい。
白澤教授のお勧めは生野菜のミックスジュースを毎朝飲む習慣をつけること。「野菜に含まれるポリフェノールが脳の萎縮につながるアミロイドβの働きを抑える」と話す。
高齢者の食事については、細かい配慮が必要になる例もある。小林特任教授は「朝はおかゆなど消化のよいものを。昼はビスケットや茶菓子程度にする。逆に夕食は寝る2時間前までにたんぱく質を多く含む食品を食べて、体を作るとよい」と指摘する。
食事はコミュニケーションの一つとしても大切だ。一人暮らしが増え、家族でも生活スタイルがばらばらなケースが多いが、「できるだけ友人や家族らと食卓をともにするよう心がければ、精神面の健康を保つのにも役立つ」と小林特任教授は訴えている。
(川口健史)
《ホームページ》
◆食習慣の改善や食事のバランスを知りたいなら
厚生労働省「メタボリックシンドロームを知ろう」の予防・改善編(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/yobou/index.html)
《本》
◆長生きに役立つ食事法などを紹介
「白澤卓二さんの100歳まで『元気で若い人』の食事」(白澤卓二著、PHP研究所)
[日本経済新聞朝刊2013年5月19日付]