着物や和菓子で大和なでしこに 歌舞伎座で和堪能
「今度、歌舞伎に行こうよ」。たまには女性同士で「和の世界」にどっぷり浸る一日も楽しそう。思い切って着物をレンタルし、和菓子で腹ごしらえ。いざリニューアルしたばかりの歌舞伎座に向かい、日本の伝統芸を鑑賞。すると気付けば、あなたは完璧な大和なでしこ。元気が出るステキ体験になるかも。
■劇場近くに和服のレンタル・着付け店
4月に新開場した歌舞伎座(東京・銀座)では、この1年間こけら落とし公演が続く。入り口と劇場をつなぐ赤いじゅうたんを歩く女性は、普段の公演よりも少しおめかし気味だ。着物を新調したという古くからのファンや、20~40代の女性グループが目立つ。
松下由紀子さん(28)はピンク色の着物姿で友人2人と観劇にきた。「帯を巻くと気持ちが明るくなる。舞台の一員になれた気がするし、和服を上手に着こなす人が多くて勉強になる」と話す。
歌舞伎会場はまさに和の空間。着物デビューのチャンスでもある。歌舞伎座や新橋演舞場(東京・銀座)、大阪松竹座(大阪市)など公演劇場の近くには和服をレンタル・着付けしてくれる専門店が多い。店や着物の種類にもよるが、一回2万~3万円程度が目安。少しぜいたくだが、晴れの日気分を味わえる。
劇場に向かう前は、まず町歩きを楽しみたい。周辺には和菓子店やお土産屋が並ぶ。歌舞伎座の地下には「木挽(こびき)町広場」が3月にオープンし、手拭いやあぶらとり紙、草履など小物が集められていて楽しい。
そして、いざ劇場へ。初心者は「セリフの内容やストーリーが全然分からない」と困惑しがちだ。パンフレットに書かれた筋書きを事前に読み、大まかな話の流れを知ろう。開演後は当然主役を中心に物語に注目する。「歌舞伎イラスト読本」などの著作がある辻和子さんは「登場人物の感情表現や衣装の色柄など、あらゆるものが大げさに表現されている。そこを楽しめば良いのです」と助言する。
主君を守るために白紙の巻物を読み上げる弁慶。「しばらく~」といって悪党の前に登場する鎌倉権五郎景政。舞台上には人間の喜怒哀楽が濃厚に詰まっている。
役者はポーズを決めたり、大げさなセリフ回しをしたりして場を盛り上げる。役者には代々伝わる屋号という呼び名もあり、通は屋号を使う。舞台中も「成田屋!」「中村屋!」など掛け声が飛ぶ。ここは一番の見せどころでもあり、大きく目を見開こう。
舞台が終わったら、女性同士で「感想会」が開かれるのがほとんどだという。「あの役者、いい表情してたね」「女形の踊り、今回は微妙だったね」。それぞれ思いを吐き出すと、帰り道の足取りも軽やかだ。
■限定品、楽しく買い物
最初の歌舞伎体験が気に入ったならば、年に数回で良いので定期的に劇場に通うのも面白い。長続きのコツは、好きな役者を一人見つけること。眼光鋭い市川海老蔵や、美しく舞う坂東玉三郎など「メディアで名前が挙がる役者には、注目されるだけの理由がある」(辻和子さん)。
気になる役者が公演ごとに、違う役柄・衣装で演じる姿を見るうちに、独特な歌舞伎の世界への理解を深める人は多いという。
何度も行くなら、お得なチケットを入手したい。歌舞伎座の場合、お薦めは3階席。舞台全体を見渡せ、5~7月の公演は4000円か、6000円と手ごろな価格設定。当日券で1演目だけ見られる一幕見席も2000円前後で用意されている。
このほか、歌舞伎座内の売店で限定コラボスイーツを観劇ごとに買って帰るのも楽しい。パティスリー銀座千疋屋のレーズンサンド、和光のクランチチョコレートなどが販売されている。舞台だけでなく、歌舞伎の空間全体を味わえたら、あなたも立派な大和なでしこだ。(武田健太郎)
[日経プラスワン2013年5月18日付]
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