検査はピロリ菌が尿素を分解する性質を利用する「尿素呼気試験」などが一般的だ。尿素を含む検査液を飲み、検査用の袋に息をふき込むだけ。便や血液、尿などを調べる手法もあり、被験者に大きな負担はかからない。

■3種類の薬を併用

除菌は3種類の薬を使う併用療法だ。2種類の抗菌薬「クラリスロマイシン」「アモキシシリン」と胃酸の分泌を抑える薬を1日に2回、7日間服用する。途中でやめてしまうと効果も限られて耐性菌を生む原因にもなる。「アモキシシリン」はペニシリン系の薬でアレルギーのある人は別の薬を使うが、その場合は保険対象外になってしまう。

1次除菌で除菌できるのは約7割の人。抗菌薬はほかの病気の治療にも使うため耐性菌になっている場合があるためだ。残り約3割は2次除菌として「クラリスロマイシン」を別のものに換えた3剤で治療する。ここまでで95%は除菌できる。

2次除菌までが保険の対象だ。慶応大学の鈴木秀和准教授は「3次除菌に有効な治療法はまだない」と指摘する。耐性菌のいる人は残り約5%といっても推定150万人以上と無視できない。さまざまな薬の組み合わせが検討されている段階だ。

杏林大学の高橋信一教授は「除菌してもがんになるリスクは残る。除菌後の内視鏡検査を欠かさないでほしい」と注意を促す。喫煙履歴のようなもので感染履歴があると、がん化に向けたスイッチが入り、リスクが高まるからだ。高校生くらいまでに除菌した場合にはリスクは低くなるともいわれ、それまでの感染検査の必要性を指摘する専門家もいる。

除菌後の内視鏡検査の頻度は胃などの状態によって変わる。胃に萎縮のある人は年1回。無い人は2~3年に1回などだ。ピロリ菌がもともとおらず、胃がんや胃の萎縮もない人は5年に1回という程度だ。

慶応大の鈴木准教授は「日本がピロリ菌撲滅に向けた壮大な実験を始めたと海外は見ている」と指摘する。除菌治療が広がって胃がん患者の治療費を抑制できれば医療費削減効果が期待できるという試算もある。個人にとっては保険適用でわずかな負担で検査できる利点は大きい。慢性胃炎の疑いなどがあれば医師に内視鏡検査などの相談をしよう。

(松田省吾)

[日本経済新聞夕刊2013年5月17日付]

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