認知症、身近に専門医 早期発見へ各地に拠点看護師が高齢者を訪問

認知症の早期発見・診断に力を入れる取り組みが進んでいる。専門医による確定診断ができる医療機関が増加。厚生労働省は今夏にも、看護師らが高齢者宅を訪問するモデル事業をスタートさせ、早期診断を促す。複数ある認知症のタイプの見極めは、進行を遅らせるための適切な対応にもつながる。患者やその家族のサポート体制を拡充、医療、介護の質向上を目指す。
認知症の専門医の診療を受ける80代の高齢者(4月、熊本県荒尾市)

「生年月日は?」「歩いてみて下さい」。熊本県の北端で人口約5万5千人の荒尾市にある「荒尾こころの郷病院」。4月下旬、認知症専門の男性医師(41)は、一人暮らしの80代の女性を初めて問診した。コンピューター断層撮影装置(CT)の画像や生活状況などから、専門医が下した診断結果は「脳血管性とアルツハイマーの混合型の認知症」だった。

「運動で進行を抑えられる可能性がある」との助言に、女性を支援してきたケアマネジャーらがペンを走らせた。今後、リハビリに重点を置く介護を進める。

型の見極め重要

同市の80代の男性の妻も一昨年、アルツハイマー型と診断。市の高齢者支援機関を通じ、在宅介護や看護、その後の入院に至った。男性は「物忘れなどはあったが、病気との認識はなく、混乱した。専門医の診断で安心して、今後の生活を考えられた」と振り返る。認知症は主に4つの型があり、それぞれに特徴的な症状も。早期診断による型の見極めは、その後の介護のあり方を判断する上で貴重な材料となる。「専門医が身近にいるため、患者やその家族に合った介護を決められる」(熊本県)

同病院が認知症専門外来を開設したのは、2011年。「認知症疾患医療センター」に県が指定したのがきっかけで、より正確な確定診断が可能になった。熊本大が専門医を派遣するほか、診断や治療が困難な場合には治療にも当たる。

県は熊本大付属病院を認知症治療の「基幹拠点」と位置づけ、その下に、地域拠点型の「認知症疾患医療センター」を置く2層構造をいち早く取り入れ、「熊本モデル」と呼ばれるようになった。現在、10カ所ある同センターの月平均の受診者は約2500人。初診の約250人のうち、約9割が認知症の診断を受け、「着実に実績を積み重ねている」(県担当者)。

厚労省が08年度から、センターの設置を推進。現在、全国で約190カ所に上る。同省は17年度末までに高齢者6万人に1カ所などを目安に、同センターなど確定診断可能な医療機関500カ所の設置を目指す。

地域住民と専門医をつなぐ取り組みはほかでも、始まっている。東京都世田谷区は昨年度、「もの忘れチェック相談会」を開始。計10回、専門医が一対一で物忘れに悩む高齢者の相談に応じた。

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