泣いてストレス解消 映画や音楽に大脳が反応「情動の涙」で心を健康に

■感情を表に出そう

横浜労災病院の山本晴義・勤労者メンタルヘルスセンター長も、泣くことを含め「感情を表に出すことはストレスを減らすうえで大切だ」と強調する。企業で講演したり社員の相談にのったりするたびに、表情が失われた「失感情症」の人が多いと感じている。会社の同僚などの訃報を単なる「死亡情報」としか受け止めず、涙一つ流さないケースもあった。

そうした人の多くは他人との会話などコミュニケーションが少なく、パソコンや携帯電話の画面ばかり見ている傾向があったという。大脳皮質が処理する情報の量が膨大になると、本能や感情をつかさどる部分との間で機能のバランスが崩れてしまう。

失感情症から回復するには「楽しい体験をし、人との交流を喜ぶ」のが効果的だと山本センター長は指摘する。「2、3人で互いに話しながら感情を出すと、より表情が豊かになる」。歩いて汗をかく、音楽を聴いたり絵画を見たりして感動するなど、ちょっとした心がけが大切。あまり必死にやるとかえってストレスが高まるので、「ほどほどに」がポイントだ。

問題は、ストレスが気付かないうちに深刻化している場合も多いことだ。自分の心の状態を把握するために「1日の終わりにきょうは泣いたか、笑ったかと振り返ってみるのもよいだろう」と山本センター長は提案している。

(編集委員 安藤淳)

ひとくちガイド
《本》
◆脳の働きに注目しストレス解消法などを解説
「『セロトニン脳』健康法」(有田秀穂・中川一郎著、講談社)
《インターネット》
◆心の悩みに関する情報集めや相談機関紹介の窓口として厚生労働省の委託で日本産業カウンセラー協会が運営
「こころの耳・働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」(http://kokoro.mhlw.go.jp/)

[日本経済新聞朝刊2013年5月12日付]

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