ランニング1日160キロ? 忍者秘伝「心身鍛練術」

忍者と聞くと、高い身体能力を備え様々な秘技を操る特殊な技能集団を連想する。これは小説や映画などで相当に脚色された姿だ。本当はどのような生活を送っていたのか、忍者や忍術を再考する動きが最近になり出始めた。敵情視察など与えられた任務を遂行するため、肉体と精神を日々鍛えていた様子が浮かびあがってきた。そこには現代にも通じる心身を健全に保つ情報が詰め込まれている。

■自衛の技術凝縮

「忍者の基本は健全な心身です。生きるため、自衛のための技術が忍術です」

忍者の身体について講演する川上氏(三重県伊賀市)

三重大学と三重県伊賀市、上野商工会議所が4月、共同で開催した市民講座で、三重大特任教授を兼務する川上仁一・伊賀流忍者博物館名誉館長はこう切り出した。福井県若狭町で忍術道場を開く川上特任教授は「現代に生きる忍者」とも称される。「忍者の身体」をテーマにした講演に、詰めかけた約120人の聴衆は熱心に耳を傾けた。

22巻からなる「萬川集海(ばんせんしゅうかい)」を代表に、忍者の技術や知識を伝える秘伝書がいくつか残っている。多くの秘伝書に目を通した川上特任教授によると、健康を維持する手法や知識を体系立てて説明しているものはほとんどないという。ただ、怪しまれずに敵地の情勢を探って持ち帰ったり、偽りの情報を流して相手を錯乱させたりと、戦国時代を生き抜く職人たちの工夫が凝縮されている。「現代生活にそのまま適用できないが、うまく整理すれば役立つ可能性はある」(川上特任教授)

代表的な忍術秘伝書「萬川集海」(複製、滋賀県甲賀市の甲賀流忍術屋敷)

忍者に必要な基本的条件は、敏しょうで強い身体と明晰(めいせき)な頭脳を保つことであり、その鍛錬を毎日続けることが大切だと説く。これは時代や国境を越えて共通する教えだろう。身体の鍛錬のために人間の骨格や内臓、筋肉の働きをよく知り、最大の効果が得られるよう、当時得られた最先端の知識を伝えている。

現代でいえば高飛びで「6尺」(約1.8メートル)、長距離走で「1日40里」(約160キロメートル)など一般には困難な修行を課した秘伝書もある。川上特任教授は「極めて高い目標値を掲げ、鍛錬を続けなさいという教えではないか」と推測する。

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