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山口・川棚温泉 瓦そば ピアニストの愛した風景

2013/4/9 日本経済新聞 プラスワン

 山口県沖に、世界的なフランスのピアニスト、アルフレッド・コルトーの名を冠した島がある。その名も「孤留島(こるとう)」。正式には厚島(あつしま)と呼ぶ、4つの島の総称だが、なぜピアニストの名が記されたのか。この島を望む川棚温泉にその名の謎解きに出かけた。

孤留島を望む

 下関フク(ふぐ)やアンコウの水揚げで有名な下関。下関駅からローカル線に乗り40分ほどの田園地帯に川棚温泉はわく。800年前に、沼にすんでいた青龍を祭ると温泉がわきあがったと伝わる古湯で、かつては湯治場として栄えた。

 川棚グランドホテルに荷を置き、早速、湯をたしなもうと、脱衣場の扉を開けると、びっくり。白い壁一面に言葉がたくさん記されている。自由律の俳句だ。川棚温泉には、漂泊の俳人と呼ばれた種田山頭火がかつて滞在し、数多くの名句を詠んだ。「川棚温泉は私の最も好きな風景だ」と言わしめたこの地の大浴場に、山頭火の句が刻まれていたのだ。

川棚グランドホテルの風呂

 温泉はラジウムを含む塩化物泉で、なめらかな泉質。広々とした露天風呂につかり、風呂の壁にも記されている句を眺める。様々な文化人もこの湯に引かれ、滞在したのだろう。

 湯上がりに、宿から散歩するのにちょうどよい距離にある青龍湖に出かける。農業用水用にとためられた小さなダム湖で、眺望がよい。川棚温泉をはさみ、遠くの海に島が浮かんでいるのが見える。「孤留島」だ。

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