ライフコラム

エコノ探偵団

32年ぶり生産増 缶詰の新顔、なぜ増えた?

2013/4/9 日本経済新聞 プラスワン

昼の事務所。所長夫人の円子が探偵の松田章司に缶詰を差し入れた。「厚切りベーコン!?」。驚く章司に円子は「最近、珍しい缶詰をよく見かけるのよ」。章司の目つきが変わった。「なぜいま缶詰の新顔が増えているのか」。調査を始めた。

この缶詰を販売する国分の森公一さん(50)が章司に応対した。「『缶つま』シリーズの一つですね。『びわ湖産稚鮎油漬け』など50品目近くをそろえます」

■震災きかっけ、味に再評価

お酒のつまみとして作られた缶つまは、開けてすぐに食べられる。2012年の出荷額は5億6千万円で10年の3倍弱に達した。従来の缶詰の中身はツナ、コーンなど素材が多く、総菜タイプは少数派だった。

自宅で安上がりに晩酌する人が増え、売れた。独身男性を狙ったが、実際の客は半数が女性。章司はうなずいた。「単身者が増え、短時間でおいしく食べられる缶詰が見直されている」

09年に世界文化社(東京都千代田区)が出した缶詰を使ったつまみのレシピ本は6万3千部。読者の3割は主婦が中心の女性。同社の道面和敬さん(44)が推定した。「缶詰料理をおかずに加えるのでしょう」

章司は大手のマルハニチロ食品に急いだ。08年度を基準にした同社の缶詰出荷額は11年度が3%増、12年度は6%増となったもようだ。11年3月の東日本大震災で備蓄用でも売れ、人気が続く。震災後は20~30歳代の主婦などから、食べ方の問い合わせが相次いだ。

豊富な品ぞろえの缶詰バー(東京都千代田区の「ミスター・カンソ神田店」)

同社の土屋直人さん(45)は「主に40歳代以上だった缶詰ファンが、若い世代に広がりました」と話す。

東京都千代田区の缶詰バー「ミスター・カンソ神田店」では棚の缶詰から客がつまみを選んでいた。女性客(27)は「震災後に買ったイワシのみそ煮缶を開けたらおいしく、缶詰を見直しました」と明かした。

この缶詰バーを全国展開するクリーン・ブラザーズ(大阪市)は店舗数を13年度末には、いまの2倍以上の50店超に増やす方針だ。

日本缶詰協会(東京都千代田区)によると、飲料を除く一般向け食品缶詰の生産量は1980年の約95万トンがピークで11年は約23万トンに落ち込んだ。円高などで輸出が減り、国内でもレトルト食品や冷凍食品に押されたためだ。しかし、12年は32年ぶりに前年を上回ったとみられる。

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL