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愛知・岡崎市 八丁味噌の秘伝探る 戦の保存食 家康公が珍重

2013/3/30 日本経済新聞 夕刊

まるやの創業は1337年といい、室町時代から約680年も伝統製法を守っている。浅井信太郎社長の案内で味噌蔵へ。薄暗い蔵の中に、巨大な桶がずらりと並び、なかなかの壮観だ。「石積みは職人技。大中小3つのサイズの石を200個以上、崩れないように、すき間なく積み上げる」と説明する。常に上から圧力を掛けることで桶の中に対流を生み、熟成をむらなく促すための先人の知恵だという。

八丁味噌は水分含有量が一般の味噌より少なく、日持ちする。戦に出向く武士にとって絶好の保存食でもあった。徳川家康が八丁味噌を大切にしたのは、そんな理由もあったらしい。

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家康公に敬意を示そうと味噌蔵見学の後に松平・徳川家の菩提寺、大樹寺に足を延ばした。桶狭間の戦いで今川義元が討たれ、家康(当時松平元康)は大樹寺に逃れた。先祖の墓前で自害する覚悟だったが、当時の住職に諭されて翻意したと伝えられる。寺には江戸幕府の初代家康から14代家茂までの歴代将軍の位牌(いはい)が安置されている。興味深いのはそれぞれ位牌の高さが生前の身長と同じこと。家康の位牌は159センチメートル。小柄な人であったようだ。

岡崎公園に立つ徳川家康像。今も市民に愛される

大樹寺にはもう一つ見逃せないポイントがある。本堂の正面に立って山門を真っすぐ見通すと、山門に切り取られた四角い空間のほぼ中央に岡崎城が眺められる。訪問日は薄曇りで、くっきりとはいかなかったが、おぼろげながら天守閣が見通せた。3代将軍家光が寺を整備する際に「祖父生誕の地を望めるように」と命じた配置という。直線距離で約3キロメートル。現代になって街中に高い建物が建ったが、この景観だけは長年守ってきた。伝統を重んじる岡崎の気質がここにもうかがえる。

(編集委員 石塚由紀夫)

<旅支度>見学無料 試食も可能
製造現場の見学は愛知環状鉄道の中岡崎駅、または名古屋鉄道岡崎公園前駅から徒歩数分。見学は無料。売店で随時受け付ける。みそ田楽などの試食も。カクキュー八丁味噌の郷(電話0564・21・1355)、まるや八丁味噌(電話0564・22・0222)へ。
大樹寺(電話0564・21・3917)はJR岡崎駅もしくは名鉄東岡崎駅からバスが便利。大樹寺行きバスに乗り終点下車。徒歩10分ほど。徳川将軍の位牌などの拝観は大人400円。江戸時代に大和絵師・冷泉為恭が描いたふすま絵も公開している。

[日本経済新聞夕刊2013年3月27日付]

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