糖尿病は免疫が自分自身を攻撃して膵島の細胞が壊れインスリンが分泌できなくなる1型と、肥満や運動不足、ストレス、遺伝的な要因などで中年以降に多い2型に大別できる。
厚生労働省の国民健康・栄養調査(2007年)によると、890万人が糖尿病を強く疑われている。予備軍を含めると、2210万人に膨れあがる。2型が患者の約95%を占めており、患者の増加が続いている。
患者は高血糖状態が長く続くと血管がもろくなり、神経にも障害が出る。この結果、腎臓の機能が低下して人工透析を余儀なくされたり、失明や足の切断などにつながったりする。こうした合併症を防ぐため、治療ではインスリンなどを補い、血糖値を健康な人に近づける。
インスリン製剤は血糖値を下げる効き目が長時間続くタイプと、食後に起こる血糖値上昇を抑えるタイプを併用する。従来は持続タイプでも一日を通して一定の効果が得られず、追加の注射が必要になるケースもあった。食事のタイミングや活動量によって低血糖を起こすこともあった。
ノボノルディスクファーマが発売した新薬「トレシーバ」(一般名インスリン デグルデク)は持続タイプ。製剤中の鎖状につながった分子が体内の毛細血管に吸収される。インスリンの受容体と結合して血糖値を下げる。分子が大きいため、血管に吸収されるのに時間がかかるという。
日本人を対象にした臨床試験(治験)で、1日1回注射すれば、効果が24時間以上続くことを確かめた。同社によると、現在使われている持続タイプは効く時間が短かったり、効果に変動があったりしたという。
東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明准教授は「新薬は効き目が一定なので、夜間に低血糖が起こりにくく、意識障害など危険な事態を防ぎやすくなる」と話す。低血糖に不安を感じて十分に投薬できないケースも減るとみられる。