国立劇場「隅田川花御所染」福助、歌右衛門の傑作を好演

「隅田川花御所染(はなのごしょぞめ)」、通称「女清玄」は姫君が尼僧となって破戒するという、同じ鶴屋南北の作でも「桜姫東(あずま)文章」をもうひとひねりした特異な作。明治以降上演が絶えていたのを六世歌右衛門が復活したが、「東文章」に比べて上演頻度は必ずしも高くない。女形として至難の役だからだが、今月の国立劇場で福助が大叔父・歌右衛門の残した傑作に挑んだ。

福助にとっても試金石だが、国立劇場としても近ごろの好企画。さらに重要な役々を次々代の歌舞伎を担うべき花形ならぬ莟(つぼみ)世代が勤めるのも、もう一つの注目の的。難作・難役である半面、手本をなぞるのと違う闊達さが期待される。

結果は上首尾。芸で見せる面白さとは別の、物語の展開を追ってゆく楽しさがある。若手たちがそれぞれ力量いっぱいに大役と取り組むのを見る興味がそれと重なり合う。福助は十分の用意をうかがわせる仕事ぶりで、とりわけ尼僧になってからが実力発揮。尼僧の破戒という怪奇は、品格をもって演じてこそ美しさに転じる。

全員が大抜てきといえる中でも、もうけ役であると同時に芝居全体を弾ませる責任役でもある猿島惣太を松也が殊勲賞物の大健闘。ただし、もう少しいい男にこしらえていい。

桜姫の児太郎はまだ硬い中に品格があるのは天性か。最大の難役・松若丸の隼人も技巧以前の大きさで、これだけ出来れば上々。新悟の関屋がいい味。中堅陣では翫雀と錦之助がさすがという兄貴ぶりを見せる。26日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

注目記事
今こそ始める学び特集