ビジネスの酒席にはいくつかタブーがある。トータルフードプロデューサーの小倉朋子さんがまず挙げるのは「目上の人に手酌させること」。
「自分のペースでやるからいいよ」と言われたら「ありがとうございます。1杯だけつがせてください」と断り、最初はともかくお酌をするといいだろう。
「今日は無礼講で」と言われても、礼儀知らずになってはいけない。敬語で話すのはもちろん、相手を不快にする話題、たとえば愚痴や陰口、下ネタを持ち出すのはもってのほかだ。最悪なのは周りのペースを無視して深酒すること。悪酔いしないよう、水を飲みつつ楽しんでもいい。
入り口から見て一番奥の上座は、目上の人の席だ。和室では床の間の前、長いテーブルでは中央が上座に当たる。ただ職場の飲み会などでは、遅れてきた上司が入り口付近に座る場合もある。「自分が奥にいるときは、黙って座っていないで一言わびて」(小倉さん)
正式な宴会では立ち上がって乾杯するが、通常は座ったままでよい。ただし杯を重ねてよいのはビールジョッキだけ。ワイングラスなど壊れやすいものは、目の高さにグラスを上げて目礼する。向こうから重ねてきたら、音を立てないようそっと合わせよう。
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日本酒をつぐときは、片手でとっくり(お銚子=ちょうし)の中央のあたりを持ち、もう片方の手を下に添える。ビール瓶も同様だ。ラベルが上になるように持とう。日本酒の場合、つがれる側はおちょこを持って受ける。女性は片方の手を底に添えるときれいだ。
ワインはソムリエなどについでもらう。このとき、グラスはテーブルに乗せたまま。手は添えない。
酒席のトラブル対策も心得たい。誰かが悪酔いしたら水を差し出し「涼しい場所で一息入れましょう」と室外で休んでもらう。
セクハラに遭いそうになったら明るく、しかしきっぱり拒絶を。「ちょっと化粧室へ」とその場を去り、戻ったら席を変えるのも一策だ。