カギはワイヤ長と円周 着心地良いブラ、どう選ぶ
まず自分のブラを診断してもらう。ワコールに着心地がいいブラと窮屈なブラを数枚ずつ持参し、専門家に見てもらった。
「これはだめですね」。広報宣伝部の金岡茉莉子さんがまず指したのは、お気に入りの1枚。苦しくならず、痕も残らないので愛用しているが「カップがへこんでいます」。体に合うブラは脱いだときに「多少痕が残るのは仕方ない」。着心地が楽だなと感じ始めたら、劣化している可能性があるので要注意だという。
体に合うものを 試着重ねて探す
逆に痛くなるため、一度しか着けていないブラを見てもらった。痛みの原因の多くは「体の形に合っていないから」(金岡さん)。人の胴は丸形や楕円形など形が違う。骨格や胸の付き方も個性がある。「サイズはあくまで目安」と考え、試着をし、ぴたりとくるものを探すしかない。
そこで国内最大級の下着売り場がある銀座三愛(東京都中央区)を訪れ、ワコールビューティーアドバイザーの三枝広乃さんに商品選びを手伝ってもらった。
まずは採寸。メジャーで胴回りと胸の一番高い部分を計測してもらい、お薦めをいくつか選んでもらう。
「こちらを着けてみましょう」。薦められたのは、普段より1つ大きいカップだった。「えっ」。何かの間違いかと思ったが、三枝さんの指示に従いお辞儀するように体を前に傾け、ホックを留める。三枝さんは熊手のような手つきで胸、脇腹、腕の付け根からお肉をかき集め、カップに収納した。もう片方の胸も素早くぐいっと集め、谷間を作ってくれた。
「これが正しいブラの着け方です」(三枝さん)。乳頭はひじと肩の中間くらいの位置。肩ひもは小指1本がスッと入る長さに調節する。これなら肩こりせずにすみそうだ。
採寸すると、いつもより3センチ胸囲が大きくなっていた。「周りにこんなにおっぱいが逃げていたんだ」とささやかに感激した。
胸を大きく見せたいならアプローチの方法は2つある。一つは上に上げてボリュームを演出する方法、もう一つは両側から中央に寄せて谷間を深くし、錯覚をさせる方法だ。ほかにもスリムに見せたいなら高さを出したり小さく見せたりするタイプ、若々しくしたいなら上向きにするタイプなど、目的にふさわしいブラがある。
胸はほとんどが脂肪のため、ブラで自由自在に形が変わる。「なりたい胸を店員に相談するのもブラ選びの近道」(三枝さん)だ。
着け方を覚えたため、実際にいろいろなブラを試してみる。毎日、会社帰りに百貨店や専門店の下着売り場に寄った。結果、たとえ同じメーカーの同じサイズでも、商品ブランドによって随分違うと実感した。
価格を問わず、着心地を左右したのは「ワイヤの長さ」「カップ底の円周」の2つ。記者は骨格が小さいので、ワイヤが短く、カップ底の円周が小さいものが着心地が良い。相談しながら試着枚数を重ねるうち、ぴたっとして気持ちいい1枚を発見。次回の買い物からは、この商品ブランドを基本にしようと思った。
洗濯機使用はNG 中性洗剤で手洗い
「ところでお客様、お洗濯はどうなさっていますか?」。店員さんに聞かれ「手洗いしてから、洗濯機で脱水しています」と答えたところ「全部、手洗いが鉄則です」と諭された。
手洗いといっても、どうすればいいのだろう。ライオンのお洗濯マイスター山県義文さんに相談した。ブラは繊細な生地を使っているため、中性のおしゃれ着用洗剤で「ふり洗い」するのがよいという。
おしゃれ着用洗剤は色あせや形崩れを防ぐ成分を含み、すすぎも早くすむ。ぬるま湯に洗剤を溶かし「そよ風のようにゆらゆらと泳がせる」(山県さん)感じで汚れは十分落ちる。水気はタオルで取り、干すときは上下逆さまにすると、より形崩れしにくいという。
ただ忙しいとネットに入れて洗濯機で洗うことも多い。仕上がりにどのくらい違いがあるのか、新品のブラをそれぞれの方法で10回洗い比べてみた。
洗濯機に一度かけると、カップがやわらかくなり、新品とは別物になった。10回繰り返すと、おわん型だったカップがくたっとへこみ、肩ひものふちは波形にゆがんだ。手洗いした方は、干す前に指先でカップの形を整えるとより本来の形を維持できる。
ブラは優しく、優しく扱うのがポイントだ。
朝、きれいに着けたブラも日中動いていると着崩れしてくる。昼食後や化粧直しのついでなどに「熊手」の手つきでこまめにお直しをしよう。
ワコールの調べでは、71%が自分のサイズを勘違いしており、そのうち54%が小さいブラを着けている。年齢や体重などで変わるので、半年に1度くらいは店で採寸をしてもらいたい。
(佐々木たくみ)
[日経プラスワン2013年3月9日付]
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