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マダニがウイルス媒介 新感染症、国内でも死者

2013/3/9 日本経済新聞 夕刊

 ダニが媒介するウイルスが引き起こす新しい感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に注目が集まっている。1月に国内で初めて感染による死亡例が発表され、これまでに計5人の死亡が報告されている。ただ、このウイルスは以前から日本に存在していたと考えられ、「感染が急拡大している可能性は低い」と専門家は指摘する。
SFTSを引き起こすウイルス=国立感染症研究所提供

 SFTSによる国内初の死亡報告例は山口県の成人女性。厚生労働省が公表して以降、愛媛、宮崎、広島、長崎のいずれも成人男性がこのウイルス感染症で死亡したことが判明した。

 SFTSは中国で2009年ごろから感染例が見つかり、11年に原因ウイルスが特定できた。これまで数百例の感染が報告された。患者は血液中の血小板や白血球が減り、発熱や嘔吐(おうと)、下痢などの症状が出る。潜伏期間は6日~2週間で致死率は推定で10~30%という。

SFTSを引き起こすウイルスを媒介するとみられるマダニの仲間=国立感染症研究所提供

 日本で判明した感染者は、直近で海外渡航歴はなかった。血液などから検出したウイルスを国立感染症研究所が調べたところ、中国で確認されたタイプとは遺伝子が一部異なっていた。このため、日本に存在していたウイルスが原因になったと考えられる。

 SFTSのウイルスを媒介するとみられるのは、野山に生息し動物の血を吸うマダニ。吸血前で3~4ミリメートルあり比較的大きい。中国でウイルスが見つかったのもマダニの一種のフタトゲチマダニだ。

 国内で死亡したケースではダニにかまれた跡は見つかっていないが、「ウイルスの特徴などからマダニが媒介した可能性が高い」と感染研の西條政幸部長は指摘する。屋内などにいるイエダニはマダニとは種類が異なり、ウイルスを媒介しない。

■「急拡大はない」

 にわかに注目を集めるSFTSだが、「今後、感染の急拡大が起こるとは考えにくい」というのが専門家の共通した見方だ。これまでの例はいずれも患者が亡くなった後に感染が分かった。初の感染例が報道され、SFTSの存在を知った遺族らが「もしや」と思い、検査可能な血液などを調べた結果、判明した。「これまで死因不明といわれた人の中に、この感染症が原因だった例があるかもしれない」と西條部長は話す。

 ただ、SFTSの症状は風邪などによる体調悪化と似ており、一般の人が区別するのは難しい。「皮膚に赤い発疹を見つけ、ダニに刺された跡ではないかと不安になり医療機関を訪れる人も増えている」とダニ感染症に詳しい東京慈恵会医科大学の嘉糠洋陸教授は訴える。同じ悩みは医師の間にもあるようだ。「典型的な症状について現場の医師に情報を提供しても、これでは分からないという声ばかり来る」

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