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健康づくり

ストレス軽減、運動効果も 笑いと元気の不思議な関係 研究は道半ば

2013/3/5 日本経済新聞 朝刊

笑いは人生を豊かにする。経験的にも体によい感じがする。最近は、医学や脳科学の観点から健康維持に役立つ理由を探る研究も活発になっている。しかし作用の仕組みは明確に分からず、信頼性の高い調査も少ない。笑いと健康の関係はどこまで分かってきたのだろうか。何がよい効果をもたらすのだろうか。
NPO法人「プロジェクトaH」は笑いの測定機を開発中(関西大学堺キャンパスで)

元気で長生き研究所(大阪市)を主宰する昇幹夫所長は、現役の産婦人科と麻酔科の医師でもある。1980年代半ばから笑いがもつ医学的効用に関心を寄せ、この10年間で笑いを勧める講演は1700回を超えた。「笑顔は世界共通の施しの行為」と唱え、「出産に立ち会い赤ちゃんの笑顔を見ることが、私の最高の健康法です」と聴衆に語りかけている。

■増える論文の数

笑いが医療に取り入れられた端緒は、米国の雑誌編集長だったノーマン・カズンズ氏が強直性脊椎炎という難病にかかり、笑いを取り入れた治療で完治した経験を著名な医学雑誌に報告した76年のことだ。ユーモア小説を読んだり喜劇映画を見たりして大笑いすると痛みが和らいでぐっすり眠れるようになり、数カ月後には職場復帰した。カズンズ氏はその後、カリフォルニア大学医学部教授に転じ、笑いの治癒力を説いた。

これを機に笑いの効用を科学的に解き明かそうとする研究が始まった。日本でも94年に初めて、笑いが免疫機能を高める可能性を示す実験が報告され研究が増えてきた。ストレスの軽減や血糖値の上昇を抑える効果、血圧の低下を調べる例が多い。

笑いと健康の関係に詳しい大平哲也・福島県立医科大学教授が世界の主要医学誌を登録するデータベースで「笑い」を含む論文数を調べたところ、82~86年の5年間に27件だったのに対し、2007~11年の5年間には121件と4.5倍に増えた。

注目度は高まっているが、笑いが健康によいという理由をはっきり証明できたわけではない。大平教授は「長期間追跡した調査がまだない」と明かす。

免疫機能の向上やストレスの軽減など短時間で一過性の効果は確かめられても、それが長期間の健康維持にどう役立っているのか、本当に元気で長生きにつながっているのかが調べられていない。効果をもたらす仕組みも不明なため、笑うと健康になるのか、健康だからよく笑うのか、因果関係をつかむ議論はいつも堂々巡りになる。

現時点で信頼できる笑いの医学的な効用とは何か。大平教授は「運動とストレスの解消」の2点を指摘する。

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