ネット媒介 客層を拡大
「『コラボ』は英語の『コラボレーション』のことね」。明日香は所長の指示で東京・新宿駅に近い繁華街にやってきた。「ビックロ」と記された商業ビルに入って驚いた。「テレビと洋服が一緒に並んでいる。何の店なの」。ユニクロの青野光展さん(45)が話しかけてきた。「カジュアル衣料店を展開する当社と、家電量販店のビックカメラがコラボした売り場です」
「2つの社名をあわせてビックロね」。2012年9月にオープン。青野さんは「1つのビルに2つの会社がそれぞれ売り場を設け、陳列などで協力しています。両社は小売りという同業態ですが、主力の商品が違う異業種なので、刺激を受けます」と説明した。
ビックカメラの執行役員、堀越雄さん(50)が明かした。「当社の客は通常、女性が30%強ですが、ビックロでは45%前後。女性客の多いユニクロと一緒になったことで新たな客層にアピールできています」
目立たなかった家庭用のたこ焼き器をユニクロの女性服売り場に置くと飛ぶように売れた。カップルでビックロを訪れた大学3年生の女性(21)は「普段は家電売り場に無縁ですが、服をみるついでなら寄る気になります」と話した。
「新たな客の開拓がコラボの目的ね」。メモする明日香に堀越さんがヒントをくれた。「ホテルではコラボルームが流行ですよ」
東京都中央区のホテルグレイスリー銀座を訪ねた明日香はスタッフに案内された。「ここが“安眠ルーム”です」。香りと音楽で客をリラックスさせ、タニタの開発した睡眠計が眠りの質を100点満点で採点する。ホテルを運営する藤田観光とは異業態、異業種であるタニタとのコラボだ。
資生堂は11年10月から12年1月までの約100泊分、東京都港区のパークホテル東京のスイートルームをコラボルームに仕立てた。10~20歳代向けの資生堂の化粧品「マジョリカ マジョルカ」のイメージで内装を施し、この化粧品を使い放題にして大勢の宿泊客を集めた。
「その前にアイスクリーム、ボールペンのメーカーともコラボ商品を作り、インターネットの“口コミ”などを通じ、ブランドが広く知られました」と資生堂の清水英孝さん(44)は解説した。「コラボはお金があまりかからず効果の大きなPR手法なので、社内の了解を得やすいのです」。ホテル側も高価な部屋が連日埋まるので利点は多い。