文学座「セールスマンの死」個性派が本領、異色のローマン

たかお鷹は膨大なセリフをこなして、ひょういつ味もある(写真 飯田 研紀)

たかお鷹は出番が少なくても、強烈な印象を残す役者だ。奇矯なこっけい味があり、暗い情念が噴出する男などを演じれば余人にない存在感が浮き出る。おもに脇で活躍してきた個性派が極めつきの名作で主役を演じ、これまでにない舞台を生んだ。

アーサー・ミラーの代表作にして、アメリカ演劇の最高傑作のひとつ。ストッキングなどを売り歩くウィリー・ローマンは家のローンをせっせと払い、家電製品をそろえて夢を実現したはずだった。ところが……。若い雇い主から休養を宣告され、期待の星だった長男は挫折をくりかえし、盗癖で自滅する。

翻訳上演では滝沢修の名舞台がなんといっても有名。感情の嵐に圧倒される巨大なローマンだった。久米明でみると、ぼくとつな手ざわりに変わって、地肌に悲しみがにじんだ。たかおの演技はまるで異質で、どこにでもいる怒りっぽい男が破滅のふちへとひた走っていく。怒りの衝動がスキップを交えた小走りに映り、恐怖におびえる本能が異常な回転を始める。わなにはまった動物のように。

カットした台本による2時間45分の上演。前半が淡彩の印象になるとはいえ、闇夜を駆ける感じ(西川信廣演出)は出る。欲をいえば、もっと進行はリズミカルに。セリフが暗く輝く後半のたかおが鋭く、その暴走は胸を刺す。勝ち組負け組で語られる社会、就職できないフリーター、肩たたきの酷薄さ。現代の世相が思いやられる。酒井洋子訳もそこをみているだろう。

脇役に甘さは残る。中では、成功者の兄を演じる三木敏彦がまさに亡霊のような味わい。妻の富沢亜古もしっかりした演技。初挑戦ながら、文学座らしいアンサンブルが異色のローマンを生かした。3月5日まで、あうるすぽっと。

(編集委員 内田洋一)

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