「プチ」は繰り返し発生 懸念
「バブルはお金があふれているときに起きます。80年代も円高不況などに対処するため金融緩和をしていました」と小巻さん。「今と似ていますね」。明日香は、安倍首相が日銀にお金を増やすよう求めているという記事を思い出した。
「新たな金融技術の誕生と重なるケースが多いですね」と小巻さん。例えば17世紀のオランダで起きたチューリップバブル。球根は出回る季節しか取引できなかったが、将来収穫する球根の価格を予想して売買する「先物」取引が登場。転売目的の投機が増え、球根1個が市民の年収の数年分という異常な価格がついた。「社会にユーフォリア(陶酔)が広がり、実体とかけ離れた値段になっても気付かなくなるのです」
次に明日香は早稲田大学教授の広田真一さん(50)を訪ねた。「学生などに仮想の株を売買させる実験でバブル発生の仕組みが分かってきました」とグラフを示して解説してくれた。例えば本来、株価は将来受け取れる配当の大きさで決まるが、値上がり益を狙う転売を前提とした取引実験では、上がっていると「まだ上がる」と予想して買う投資家が出てきて投機の循環が起きやすいという。
仮想の株の価値を計算しにくくすると「周囲の意見に引きずられたり、今の株価が将来も続くと判断したりするようになります」。先が見えない社会の変革期ほどバブルは起きやすい。
次に聞いた上智大学准教授の中里透さん(47)は「バブルが膨らむときは不動産価格の上昇が起きています。株より社会への影響が大きいのです」と説明した。米国でも新型の住宅融資(サブプライムローン)がバブルを生み、崩壊後の経済混乱で、2008年に世界同時不況が起きた。
日本でも80年代に都市開発が動き出すと「地価は下がらない」という神話まで誕生。銀行は土地さえあればお金を貸すようになり、それが株や土地に流れてさらに価格を押し上げた。
次に訪れた国土交通政策研究所では、研究調整官の山田直也さん(43)が不動産バブルが起きる仕組みを解説してくれた。「本来、不動産の価値は家賃収入から計算されます。ところが取引実験をすると、逆に不動産の購入価格から賃貸料を決める人が少なくなかったのです」。不動産価格と賃貸料が交互に上がる循環が起きることがわかる。明日香は「まだ地価は下がっているけど上昇に転じたら要注意ね」と思った。