再び流通経済研究所の山崎さんに聞くと「季節商戦は年を経るごとに変化していくものです。企業は柔軟に適応していかなければなりません」。伝統的な正月のしめ飾りなどが廃れつつある一方、受験生向けの菓子や夜食、節分の恵方巻き、ハロウィーンなど新たな商戦が定着し始めている。

季節商戦が増え、それぞれの商戦では控えめに商品を発注するようになった。昔ほど店舗は在庫不足による機会損失を恐れなくなったと山崎さんは指摘する。複数の商戦でリスク分散できるというわけだ。

事務所で報告すると、所長が納得した様子で章司に一言。「君が毎年チョコをもらえないのは、モテないからじゃなかったんだな」

<バレンタイン商戦 本格的な定着は1970年代前半>

メリーチョコレートカムパニーが、1959年に発売したハート形のバレンタインチョコ

欧米ではバレンタインデーに、男女が花や菓子など様々なプレゼントをする習慣がある。日本には1950年代後半からこの習慣が紹介されることが増え、女性から男性にチョコレートを贈るという日本独特の形で根付いていった。

早くからバレンタイン商戦を始めた企業の一つがメリーチョコレートカムパニー(東京都大田区)。当時の社長の息子がパリに住む知人の手紙でバレンタインの習慣を知り、58年にデパートで板チョコを売り始めた。ただ当時は全く知られておらず3個しか売れなかったという。

翌年にはチョコの形をハート形に変更し、「年に一度、女性から男性へ愛の告白を!」というキャッチコピーを付けて宣伝をした。ほぼ同時期に、不二家や森永製菓なども販売に乗り出している。さらにこうしたメーカーの動きを当時の女性誌が相次ぎ紹介したことなどもきっかけに「女性から男性へ」贈る習慣が広がっていったようだ。

当初はイベントとしては盛り上がらなかったが、本格的に定着したのはチョコ生産量が拡大した70年代前半といわれる。40年近くを経て、バレンタインデーに託す人々の思いは多様化している。

(畠山周平)

[日経プラスワン2013年2月9日付]

注目記事