「チョコの手作り市場が拡大しているのも追い風です」と菊池さん。10年ほど前から女子学生を中心に、友人同士でチョコを贈り合う「友チョコ」の習慣が広がってきた。お金をかけず多くの人数に配るため、小分けのチョコを作って贈るのだという。

江崎グリコがまとめた「バレンタイン事情2013」で確かめると、10~20代の独身女性のうち8割弱が「手作りやアレンジしたチョコをあげた」と回答していた。中高生に限れば、9割近くにも達していた。

料理レシピサイトのクックパッドにも聞いてみると「毎年1月からバレンタイン前の時期が、年間を通じて最も閲覧数が多いです」(広報)。

「学生の頃とは様変わりだな」と章司は驚いた。事務所で報告書をまとめていると、所長が首をかしげた。「贈答用や高級品を手掛けるメーカーは事情が違うんじゃないのか」

メリーチョコレートカムパニー(東京都大田区)を訪れた。経営戦略室長の川島孝雄さん(45)は意外な話をしてくれた。「最近はバレンタイン向け商品がホワイトデー商戦でも売れるのです」

「でも男性と女性では好みが全く違うはず」。驚いた章司が疑問をぶつけると「最近は女性に贈ることも想定して、昔とデザインはがらりと変わりました」との答え。

増える商戦、発注は控えめ

「論より証拠」と川島さんは商品カタログを見せてくれた。動物キャラクターやパステルカラーなど、若い女性が喜びそうなパッケージが目立つ。売れ筋はロシアの民芸人形マトリョーシカをかたどった箱の「ショコラーシカ」。黒や茶色などを基調としたかつてのデザインとは対照的だ。

「チョコをもらうのは男性だけ、という時代じゃないのか」。章司は博報堂生活総合研究所の小原美穂さん(41)にも意見を求めた。「最近では“女性がチョコを楽しむ日”としての性格を強めつつあります」

同研究所が20代以上の男女に実施する「生活定点」調査によると、バレンタインデーにプレゼントを友達間などで「贈る」「もらう」とした女性の割合は増える傾向にある。「デパートなどでは1月からチョコ売り場が設置され、自分へのご褒美として買う人も多いでしょう」(小原さん)

一方で男性は「もらう」人の割合がじわりと減った。企業の「虚礼廃止」の動きが広がり、義理チョコを贈る習慣も廃れつつある。調査会社マクロミルが実施した「働く男女のバレンタイン実態調査2013」によると、今年上司に義理チョコを贈る20~30代女性の割合は34%で、4年前より18ポイントも低下した。

また若年層にまで携帯電話やメールが普及し、「愛の告白」をチョコに託す女性も減っているようだ。

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