がん免疫療法 「最善の治験」内外で試す新たな評価法も模索

創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンスが2012年2月に発表した免疫療法の臨床試験(治験)の結果に、患者らの落胆が広がった。進行した膵臓(すいぞう)がん向けに開発していたペプチド(たんぱく質断片)を用いたワクチンの有効性が示せなかったからだ。膵臓がんは進んでから見つかる例が多く、有効な治療法も少ない。治験に大きな期待がかかっていた。

免疫療法は患者本人の免疫力を高めてがんを攻撃する。09年から始めた治験は、がん細胞に栄養を送る血管の細胞表面にあるアミノ酸と同じ配列のペプチドを患者に投与。患者の免疫システムにこの配列を覚えこませ、血管への攻撃力を強める狙いだった。

■複雑な仕組み

同社は今年1月下旬、米国の国際学会で治験の詳しい解析結果を発表。有効性が示せなかった理由として、血管の成長を抑えるだけでは攻撃力が不十分だった点などを挙げた。角田卓也社長は「ワクチンによる反応がしっかり出た患者では、生存期間は延びることも分かった」と話す。

そこで同社は治療戦略を見直した。従来のペプチドに加え、他の2種類のペプチドを同時投与する「カクテル型ワクチン」による治験を、大塚製薬と共同で12年5月から国内で始めた。膵臓がん細胞自体を攻撃するタイプのペプチドなどを使っている。対象とする膵臓がん患者も従来の約2倍の300人に増やした。14年にも結果が出る予定だ。

免疫療法は抗がん剤とは体内での作用の仕方が大きく異なる。抗がん剤はがん細胞に直接作用し抑え込むよう働くのが一般的だ。これに対し、非常に複雑な仕組みで調整されている免疫システムを活用する技術はまだ確立していない。このため「免疫療法でがん細胞への攻撃力を高めようとしても思う通りにいかないケースが多い」と東京女子医科大学で前立腺がんや腎細胞がんの免疫療法に携わる小林博人特任准講師は指摘する。

抗がん剤の治験では一般に、がん組織が縮小すれば生存期間も延び、有効だと判断される。しかし免疫療法の治験は、海外を含めても有効性を証明できない例が多い。免疫療法では免疫力が上がるのに時間がかかったり、がんの大きさの変化と生存期間が必ずしも一致しなかったりする課題があるためだ。ただ「がんが縮小しなくても生存期間が延びる患者もいる」(小林特任准講師)。こうした点が評価を難しくしている。

免疫療法の治験が数多く進む米国では、食品医薬品局(FDA)が治験の考え方を示している。既存の抗がん剤と作用の仕方が違う点を考慮して対象者や評価方法を考えるべきだと明記し、具体的な方法は定めていない。企業によっては、他の治療を受ける前の免疫力が強い患者を対象にするなど、治験ごとに最善の手法を検討しているという。

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント