SNSで一味違う旅 現地の人や仲間と楽しく
珍スポット探しも
地元の人に案内してもらい隠れた名店を訪ねたり、同じ趣味の人が集まって旅をしたり――。SNS(交流サイト)の仕組みを使い、一味違った旅行を楽しめるネットサービスやスマートフォン(スマホ)のアプリが登場している。定番のツアーや観光スポットに飽き足らない人の人気を集めている。
「ジョンソンスペースセンターで宇宙を感じよう!」「世界最高の音楽フェスティバルですが、チケットとコテージの確保が難しかった。興味のある人参加しませんか」
SNSでツアー企画
JTBが昨年9月に始めた旅行サイト「共感トラベラー」は利用者がSNSを使って海外旅行商品を企画できるサービスだ。旅行SNSを運営するトリッピース(東京・渋谷、石田言行最高経営責任者=CEO)が運営で協力。一定の参加者が集まるとJTBがツアーを催す。
安全性を保つため、実名制のフェイスブックでのログインを必須にした。利用者が興味のある旅の参加希望ボタンを押すとフェイスブックに登録したプロフィル画像が掲載される。利用者はサイト上で企画のタイトルと内容、イメージ写真などを投稿。サイトを閲覧している人は参加意思を表明し、日程や予算の希望を書き込む仕組みだ。
「地元の人しか知らない店に行けておもしろかった」というのは、国際基督教大学の留学生、グレイス・ビュークリさん(20)。現地の人が地元を案内する「Meetrip(ミートリップ)」という有料ネットサービスを使い、渋谷の回転ずしや浅草見物を楽しんだ。
同サービスはサイトにログインすると、ガイド役の自己紹介や案内時間、料金などが表示される。利用者は気に入ったガイド役の人にメッセージを送り、双方で待ち合わせ場所や時間を決め、案内してもらう。
ネットベンチャーのダックダイブ(東京・渋谷)が昨年9月に開始。現在、日本では沖縄や京都など4都市、海外ではホーチミンや台北など計9カ所を対象にしている。サイトは英語が基本で、利用者・ガイドとも約3割が日本人という。
見知らぬ人と会うのは怖いが、「実名性のフェイスブック経由でのログインと、クレジットカードまたはペイパルでの支払いを条件にすることで、不審者が入るリスクを極力排除した」と、CEOの貴山敬さんは説明する。
自身が大学生の時にバングラデシュで出会った現地の小学校校長に案内してもらった体験が強烈に心に残り起業した。
ミートリップのようなサービスは海外にもあり、「Gidsy」や「Vayable」は興味のある分野や地名で検索すれば、世界中の旅の達人を探せる。観光名所や飲食店などの口コミ情報を掲載する「フォートラベル」や「トリップアドバイザー」も参考になりそうだ。
ホテルなどに代わり、ネットを通じて個人間の部屋の貸し借りを仲介する米エアビーアンドビー(エアB&B)などの利用も広がっている。
リスクは自己責任で
もちろん、個人間のやり取りなので注意も必要だ。旅行ジャーナリストの村田和子さんは「SNSに書き込まれた周りの人の投稿、顔写真や履歴などをしっかり確認することが大切」と指摘する。少しでも怪しさや不安を感じたら、利用を避けるのが賢明だ。
「旅行会社のツアーと異なり、交通や治安などで問題が発生した時には自己責任となることを肝に銘じておくべきだ」。そもそも個人ガイドは飲食や観光地の案内はできるが、交通や宿泊などの手配をするには日本では観光庁からの認可が必要だ。
旅先で人と出会えば、楽しみも広がる。注意しながらネットを使いこなせば、新しい発見ができそうだ。
(電子報道部 杉原梓)
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