非常食だけで1週間 試して分かった問題点と対策缶詰の塩分に悩む

科学技術政策研究所の中沢孝さんは「宇宙飛行士は期間分の食料からその日に食べたいものを選んで食べる。気分に合わせて食べるものを決めよう」と助言する。まずは冷たくても食べられそうなものを探す。

失敗もあった。そのまま飲もうとしたミネストローネスープは油が浮いており、温めないとどうにも飲めない。温めなくても良いと表示されたレトルトカレーはまずまずだった。

優れていたのはおかゆ。冷たくてもおいしく、水分が多いのでのどが渇きにくい。パンは水分が必要だが、冷たくてもそれほど気にならない。2日目の夜から温かいものを食べたくなった。その夜、布団におかゆのレトルトを入れて寝てみたが、温まらなかった。

3日目の夜、発熱剤入りのレトルト食品を食べた。約30分で白米とシチューが熱々になり、3日ぶりの温かい食事。火が通ると香りも出て、久しぶりに嗅覚が刺激された。思わずうっすら涙が。発熱剤入りのレトルトは値段が高いが、火を使えない時は救いになる。いくつか備えようと心から思った。

■缶詰の塩分 気づかず無理、4日目に腹痛

4日目からはガスコンロを使った。これで食生活も一気に良くなると思った矢先におなかが痛くなった。佐藤さんに相談すると「塩分の多い缶詰を食べ続けたので内臓が疲れたのかもしれない」と言われる。

火を使えない3日間は食欲がない時も栄養バランスを考えて食べ慣れない魚や肉、野菜の缶詰を食べていた。気付かないところで無理をしていたようだ。

佐藤さんに「フリーズドライの野菜をたっぷりの湯で戻して、めんつゆであえた薄い味付けのおかずを入れて体調を整えて」と助言された。実際に作って食べると五臓六腑(ろっぷ)に優しい味が染み込む感じで体調も少し良くなった。

当初の予想に反し、厳しさを感じたのは5~6日目だった。胃腸は回復したが、食欲が出ない。記者の場合、野菜よりも魚や肉の摂取が難しかった。同じ缶詰でもメーカーによって微妙に味が異なる。普段から食べ比べてお気に入りを見つけ、家族で食べ慣れておく必要性を感じた。

奥田さんは「非常時こそいつもの家庭の味に近いものを食べることが、乗り切る力につながる」と話す。そのことを身をもって感じた1週間だった。

記者のつぶやき
「なんて認識が甘かったのだろう」と何度も思った。これまで自宅に置いていたのは家族3人分で飲料水2箱、アルファ米10食、子ども用クッキー2缶。ガスコンロもあったが楽観視していた。
終わりが決まっている非常食生活なのに家族に弱音を吐いた。実際に被災された方々のご苦労はどれほどだったかと改めて思う。今回の体験を教訓にしたい。
(坂下曜子)

[日経プラスワン2013年2月2日付]

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