大腸がん治療、安全・緻密に 手術支援ロボも存在感日経実力病院調査2012

2013/1/25

日経実力病院調査

大腸がんは食生活の欧米化で患者数が増加傾向にあり、部位別では肺、胃に次いで年間死者数が多い。日本経済新聞社の実力病院調査で症例数の多い病院は病期に応じ、内視鏡治療や腹腔(ふくくう)鏡手術など体への負担が少ない方法で切除。緻密で安全性の高いロボット支援手術や機能温存を重視した術前化学放射線療法を実施する例もあり、治療の質を高めていた。

初期は内視鏡、進行時は腹腔鏡

大腸は盲腸からS状結腸までの「結腸」と、消化管の最終部となる「直腸」に大別される。がんは腸管の内側を覆う粘膜から発生して徐々に腸壁に進入。進行するとリンパ節や肝臓、肺などの臓器に転移する。

「日本の大腸がんの治療成績は内視鏡による診断・治療のレベルの高さときめ細かいリンパ節切除により、経済協力開発機構(OECD)加盟国中でトップ」。治療ガイドラインを作成する大腸癌研究会(約500病院加盟)の杉原健一会長(東京医科歯科大大学院教授)はこう説明する。

杉原会長によると、治療方針はがんの深達度や転移の状況で判定する病期によって決まる。粘膜や粘膜下層で止まっている早期がんは内視鏡で切除。腫瘍の下に生理食塩水を注入し、ワイヤをかけて高周波電流で焼き切る内視鏡的粘膜切除術(EMR)と、腫瘍の周囲と下部にナイフを入れて剥がし取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)がある。

関西労災病院(兵庫県尼崎市)は昨年3月までの1年間で結腸がんの内視鏡治療を230例以上実施。消化器内科の中村剛之医師は「ESDは大きな腫瘍でも一括して切除できる。一方で、腸壁は胃壁に比べて薄く細菌も多いため、穴が開くと腹膜炎を起こして緊急手術が必要になることもあり、胃のESD以上に高い技術が必要だ」と語る。

2001年の開院時に外科、内科の垣根を越えた「消化器センター」を開設した昭和大横浜市北部病院(横浜市)は拡大内視鏡検査を駆使した正確な診断・治療が強みだ。工藤進英センター長は「ほかの病院で外科的な手術でしか治療できないとされた患者を内視鏡で治すこともある」と話す。技術を習得しようと、全国の大学から若手医師が集まるという。

がんが腸壁の粘膜下層を越えて浸潤したり、リンパ節に転移したりすると内視鏡治療では対応できなくなる。以前は腹部を切り開く方式が主流だったが、十数年前から結腸がんを中心に、腹部に開けた小さな穴からカメラや鉗子(かんし)を入れて実施する腹腔鏡手術が普及。大腸がん手術の約35%に達したとの報告もある。

一方、直腸がんは周囲に臓器や神経が密集し、医師が不慣れだと、腫瘍を取り残したり排尿や性機能などを損ねたりする恐れがある。このため治療ガイドラインは開腹手術を標準治療としている。

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