肺がん手術、「胸腔鏡」主流に 患者の負担を軽減日経実力病院調査2012

今回の調査では、手術の前後に抗がん剤治療や放射線療法を組み合わせることで、予後などの治療成績を向上させている病院が目立った。しかし肺がんは自覚症状が出ないため発見しづらく、腫瘍の拡散・転移などで手術ができないケースは6割に上る。

札幌南三条病院(札幌市)は肺がん治療を専門とする全国でも珍しい病院。「手術なし」は全国で2番目に多い1689例で、幅広い抗がん剤治療を施すことで知られる。北海道全域から患者が集まり、10年に開設した外来には月30~40人が抗がん剤治療に訪れる。放射線治療は実施しておらず、患者には近隣の病院を紹介している。

学会の指針に沿い、がんのタイプや進行度によってカルボプラチンなど2種類の抗がん剤を併用するのが標準だが、薬が効かなかったり、耐性ができたりする患者もいる。同病院は06年に10種類以上の治療パターンをまとめた独自の指針を策定。合併症や患者の年齢や症状などから副作用を考慮して選択している。

藤田昭久副院長は「これまでの治療経験を生かして選択肢を増やしている。患者が希望すれば、体力などの状態を慎重に見極めたうえで、最適な化学療法を提供したい」と力を込める。

同病院は「適切な治療には正確な進行状態を知ることが必要」(藤田副院長)として診断体制を強化。全身のがんの状態を調べる陽電子放射断層撮影装置(PET)と体を輪切りにした状態を映し出すコンピューター断層撮影装置(CT)を組み合わせた検査機器を12年から導入している。

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健康保険、一部適用の先進医療 免疫療法などを認定

健康保険を一部適用できる先進医療として厚生労働省が認めた肺がん治療もある。将来的に保険診療とすることを視野に入れ、有効性を高める取り組みが進んでいる。

東京大(東京・文京)の中島淳教授らはがん細胞への攻撃能力がある白血球の一種、ガンマ・デルタT細胞を患者の血液から採取、培養して体内に戻す免疫療法を実施している。手術や抗がん剤の標準治療で非小細胞がんを克服できなかった患者が対象で、2014年秋ごろまでに約85人を治療する計画だ。

投与は2週間ごとに計6回投与。1回あたりの患者負担は約22万円になる。これまで患者15人に治療を試みたところ、がんが消える効果は確認できなかったが、6人で進行を遅らせることができたという。中島教授は「患者に副作用はみられなかった。今後、改善を積み重ね、有効な治療法にしたい」と話す。

免疫療法ではこのほか、千葉大病院(千葉市)がリンパ球の一種である「NKT細胞」を使った治療を進めている。

陽子線や炭素イオン線(重粒子線)を使う粒子線治療も一部の肺がんで認められている。粒子線は体に入ってから一定の距離で最大のエネルギーを放出して止まる性質があり、エックス線照射と比べて正常な細胞への副作用が抑えられる。厚労省によると、12年12月時点で陽子線治療の指定医療機関は7施設、重粒子線治療は3施設。治療費は約300万円と高額になる。