2013/1/19

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現秋田県立美術館の三角屋根には藤田の希望による採光窓がある

平野が用意した米蔵をアトリエに、藤田が「秋田の行事」を描いたのは1937年(昭和12年)。翌38年には美術館が着工するも、戦時体制のため工事は中断。米蔵に保管されたままだった「秋田の行事」が日の目を見るのは30年後の67年。行政と平野家、そして一般からの寄付で完成した現美術館に展示された。

「秋田の行事」を所蔵する平野政吉美術財団の原田久美子さんによると、美術館の建築にあたり、平野家の親族が当時パリ郊外に住んでいた藤田を訪ね、意向を反映した。その1つが鑑賞空間に自然光を取り入れること。そのため印象的な三角屋根は採光窓が設置されている。

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9月の開館を前に暫定オープンしている新美術館を訪ねてみる。建築家・安藤忠雄氏が手がけた近代的な美術館の2階ラウンジから、ガラス越しに現美術館が見えた。いすに腰を下ろすと、二つの美術館の間に走る道路が見えなくなる。ガラスの外に作られた水庭が、千秋公園の堀から続いているかのようだ。

新美術館には至る所に三角形をモチーフとした造形が見られる。安藤氏は現美術館の三角屋根をイメージしたという。あの屋根が、藤田の希望を反映したものだと知っていたのか。

「新美術館への移転は『秋田の行事』第3章の始まり」と原田さんは考える。第1章は実現しなかった幻の美術館、第2章は現在の美術館。「藤田の意図が反映された鑑賞空間を離れ、現代の建築家が作った空間でどう見えるか」

雪道を歩き現美術館へ戻った。新美術館での姿を想像しながら、藤田が望んだ空間にある第2章も記憶にとどめようと考える。現美術館で「秋田の行事」が見られるのは6月末までだ。

(編集委員 大谷真幸)

<旅支度>駅から近く、新館も見学
 盛岡駅から秋田駅までは秋田新幹線で約90分。秋田駅から2つの秋田県立美術館までは、雪がなければ徒歩で約10分。現秋田県立美術館では「秋田の行事」以外の藤田作品も展示されている。新しい秋田県立美術館は現在暫定オープン中。
 秋田市民俗芸能伝承館(電話018・866・7091)はかつての外町に位置し、隣接する旧金子家住宅では藤田が訪れた時代の民家が見学できる。
 「秋田の行事」に関する問い合わせは平野政吉美術財団(電話018・833・5809)まで。

[日本経済新聞夕刊2013年1月16日付]

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