秋田市 冬の町描いた巨大な絵藤田嗣治が戦前に制作

2013/1/19

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今年9月、秋田市に新しい県立美術館が開館する。道路をはさんで向かいにある現在の県立美術館に展示されている藤田嗣治の絵画「秋田の行事」も新美術館に移される。

20世紀前半にパリで絶大な人気を誇った藤田が描いた「秋田の行事」は高さ3メートル65センチ、幅20メートル50センチという巨大な絵画。秋田の様々な祭事と日常が描かれ、基調となる季節は冬。現美術館で、冬に「秋田の行事」が見られるのは、今冬が最後だ。

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雪がつもる千秋公園に建つ現秋田県立美術館。外観が印象的

秋田駅から現美術館までは歩いて10分ほどの距離だが、大雪のために、思った以上に時間がかかった。江戸時代に久保田城があった千秋公園の堀のむこうに、教会のような三角の屋根が見える。この建物の2階に「秋田の行事」は展示されている。展示室の入り口からは絵の一部しか見えない。中に入ると巨大な絵に驚かされることになる。

乳白色の裸婦像で知られる藤田だが、1930年代に入ると濃厚な色彩に画風は変容する。また巨大な絵画の制作にも積極的だった。2つの要素が見られる「秋田の行事」は、30年代の藤田を代表する作品だ。

この作品がうまれるきっかけを作ったのは地元の豪商・平野政吉。藤田作品を多数購入していた平野は、秋田市に藤田の美術館を建てようと考える。その美術館のために藤田が描いたのが「秋田の行事」だった。

藤田が描いたのは、当時の商人町「外町(とまち)」の様子。横に長い絵の右側には様々な祭事が、左側には日常が描かれる。この絵を描くために、藤田は何度も秋田市を訪れた。

外町は千秋公園から旭川を越えた西側に広がっていた。藤田が見た日常風景はほとんど残っていないが、当時の建物や祭事の風習は民俗芸能伝承館で見られる。絵の中央で、祭事と日常を分けるように描かれた香櫨木(こうろぎ)橋も現存する。ただ実物は絵よりも小さい。

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