ホリプロ製作「100万回生きたねこ」切ない愛の情景、しなやかに

森山未來と満島ひかり。猫になったふたりが紡ぎだす愛の情景の切なさ。みずみずしい身体感覚から、忘れがたい舞踊の詩が生まれた。

死ぬのなんてへっちゃら。そのつど生き返る猫は、けれど本当の愛を失ったとき息たえる。佐野洋子の絵本をもとに演出したのは、ダンス最前線で活躍するイスラエルのインバル・ピント、アブシャロム・ポラックのふたり(振付、美術も)。閉ざされた箱のような舞台に、機知に富んだシーンを鮮やかに繰り出す。

本棚やベッドの下から姿を見せる猫は神出鬼没。満島演じる女の子が赤い糸で猫を出現させる設定で、森山の猫は王様、泥棒、船乗りと飼い主を換え、死んでは生き返る。たくさんのビンをふって、あふれる涙を表すおかしさ。筋を追う観客には戸惑いもあろうが、これはマイムのような演劇的バレエだろう。

森山、満島ともに細身のシルエットを生かし、しなやかに踊る。歌もハミングもいい。コミカルなのに心の奥にはしんとして動かないさびしさがあって、ずれを埋めこむダンスに悲しみが浮き出る。

森の中の2幕は体操の平均台のようなセットを使った愛の死の場面へ。女の子から転じた白い猫に寄り添う森山は、いよいよさびしい。唐突な展開ながら、身体の雄弁さが飛躍の埋め合わせをする。手をつなぎ、抱擁し、闇に沈むまで、体のラインがうずくような喪失感を印象づける。

バンドが生演奏する阿部海太郎、ロケット・マツの音楽が心の風景に寄りそい、とりわけ最後のマーチが見事。音感のいい銀粉蝶、今井朋彦が絶妙の脇役。藤木孝のハイテンションも面白い。糸井幸之介、戌井昭人、中屋敷法仁の共同台本。約2時間20分。

(編集委員 内田洋一)

1月27日まで、東京芸術劇場プレイハウス。1月31~2月3日、大阪・シアターBRAVA!。2月9、10日、北九州芸術劇場大ホール。2月16、17日、広島・はつかいち文化ホール。