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兵庫・丹波篠山 ぼたん鍋 冬のごちそう、郊外の湯でゆったり

2013/1/15 日本経済新聞 プラスワン

 丹波篠山(篠山市)というと、「うまいもの」が多い。マツタケ、黒豆、丹波栗。米もうまいし、丹波杜氏(とうじ)の醸す酒もいい。そして、食通が足を運ぶ季節といえば、冬。その目的は「ぼたん鍋」だ。

城下町として栄えた(篠山城跡)

 ぼたん鍋はイノシシ肉を味噌で煮込んだ郷土料理。ぼたんの花のように皿に盛りつけるから、など由来には諸説ある。「雪がちらちら丹波の宿に 猪(しし)が飛び込む牡丹(ぼたん)鍋」とデカンショ節にも歌われる。

 篠山は、武家屋敷や商家町を残す城下町。郊外には温泉もわいている。1日滞在してゆっくり過ごすにはよい町だ。鍋をつつく前に町をひとめぐりする。

 往時の面影を色濃く残す河原町妻入商家群を散歩すると、懐かしい雰囲気の本屋や山椒(さんしょう)漬けの店など商家が点在しており、店をのぞきながら歩くうちにあっという間に時間が過ぎる。篠山の町なかには、おしゃれな町家カフェがあったり、畑に囲まれる集落の古民家に料理人が移り住み店を構えていたり、新旧のバランスも魅力的だ。

見た目にも美しいぼたん鍋(写真の肉は最上肉)

 この日お世話になった老舗旅館「近又」で、ひと風呂浴びる。宿は温泉ではないが、汗を流し、浴衣に着替えて準備万端整った。いよいよ、ぼたん鍋の出番だ。

 鍋と野菜に続き、ぼたん色の赤身と真っ白な脂身のコントラストが見事なシシ肉が美しく花のように盛られて登場。天然ものにこだわり、提供できるのは狩猟解禁後の11月中旬から3月までだそうなので、まさに冬の味覚だ(冷凍肉であれば通年可、要予約)。

 秘伝の味噌が溶かれた鍋に入れる前に、肉に山椒をひと振り。味のアクセントになる。肉はすぐ食べず、16分ほど煮込む。なぜ16分なのか。第十三代近江屋又兵衛こと館主の森本敦史さんに聞くと、「シシ、16なので」との答えに大爆笑。煮込むほどにコクが出るそうだ。ひと口いただくと、意外にやわらかく、山椒がふわりと香り、つるんとした脂身もクセがない。

 鍋のシメは「ぼたん丼」。肉を煮込んだ鍋で半熟卵を作り、味噌ごと白飯にかけていただく。その夜は大満足で熟睡したのは言うまでもない。

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