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舞台・演劇

国立劇場「夢市男達競」しゃれっ気効いた正月芝居

2013/1/12

舞台・演劇

今月22日は河竹黙阿弥没後120年に当たる。国立劇場恒例の菊五郎劇団による正月公演は、その黙阿弥の通称「明石志賀之助」を基に、上演の絶えていた作品を今日の上演形態にアレンジして娯楽作「夢市男達競(ゆめのいちおとこだてくらべ)」を創り出した。

侠客(きょうかく)夢の市郎兵衛、初代横綱とされる明石志賀之助など江戸草創期の巷談(こうだん)上の人物は今やなじみが薄くなってしまったが、それら江戸フロンティア時代の庶民の英雄伝説と、木曽義仲・頼豪(らいごう)阿闍梨(あじゃり)など鎌倉幕府転覆に関わる物語をない交ぜた奇譚(きたん)劇だ。国立劇場文芸課による脚本はよく整理されているが、筋の展開部分に当たる3幕目「市郎兵衛内」の場がもたれがちになるのはやむを得ぬところか。

しかし、「仮名手本忠臣蔵」大序風の序幕「鶴ケ岡八幡宮」に始まり、「御輿ケ嶽(みこしがだけ)」の新時代劇風、「市郎兵衛内」の「幡随長兵衛」を思わせる世話場、4幕目の七福神の所作事、5幕目「大磯京町」の廓(くるわ)風景からコミカルな猫と鼠(ねずみ)の立ち回り、大詰「鎌倉御所」の御家狂言風など目先を変えた展開で観客の目を楽しませながら、歌舞伎の典型をひとわたり初心者にも教授する入門編的な要素も兼ね備えている。

レーザー光線で妖術を破ったり、人気タレントのもじりがあったり、横綱審議委員でもある田之助に横綱免許をつかさどる行司役を勤めさせるしゃれっ気などお楽しみも如才なく盛り込んである。薄味なのは菊五郎劇団の芸風であり、それを承知で正月芝居を楽しむには十分だ。

菊五郎の市郎兵衛、時蔵の女房と薄雲太夫は悠々たるもの。菊之助と松緑が大車輪の活躍を見せる。菊之助が新造胡蝶(こちょう)で女武道風の上、何と明石志賀之助で二枚目力士になるのは驚きだ。27日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

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