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舞台・演劇

新橋演舞場 初春大歌舞伎当代の熟成度示す三幅対

2013/1/11

舞台・演劇

歌舞伎座に代わって3年間櫓(やぐら)を掲げてきた新橋演舞場が首座の劇場としての最後の正月を迎える。大一座の演目が並ぶ中、中村雀右衛門一周忌追善をうたった2演目が施主である芝雀の好演によりとりわけ充実している。特に「仮名手本忠臣蔵・七段目」のお軽で示した実力は、地味な芸風と見られ十分な評価がなされないことに不審不満を覚えていた評者として大いに我が意を得た。亡父の名演に迫る傑作である。平右衛門役に吉右衛門を得た効果も大きく、兄妹二人で語り合う場面は久々に大人の風格を持った「七段目」らしいコクのある面白さを堪能した。大星役の幸四郎も役者ぶりが大きく、この三幅対は当代歌舞伎の熟成度を示すものと言ってよい。

「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」も吉右衛門の又平を支える女房おとくの、出るところは出、夫を立てるところは立てる進退に細かな工夫がなされていながらそれを際立たせない妙味に芝雀の実力がうかがわれる。歌六と東蔵の将監夫婦も情あり理あり、作品の彫りを深くしている。芝雀の兄・友右衛門も雅楽(うた)之助役で一翼を担う。

幸四郎が福助と組んで「戻橋」と「逆櫓(さかろ)」を見せるが、近年では珍しい前者が幸四郎、福助それぞれの芸風にかなって面白い。幸四郎は初役。こうした明治の新傾向の作品はこの人が最適任者と思われる。祖父・七代目幸四郎の遺産を将来に伝える意味からももっと試みていい。「逆櫓」も風格は見事だが、この人の義太夫物の弊としてセリフが籠もって聞き取りにくいのが気になる。「七段目」の大星にもその難はある。

三津五郎が正月らしい小品「車引」と「釣女」を、我当・梅玉・魁春らで開幕の「寿式三番叟」を、いずれも快く演じ初める。26日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

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