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舞台・演劇

新春浅草歌舞伎OB海老蔵、粗削りだが骨太に

2013/1/7

舞台・演劇

新年恒例の浅草若手歌舞伎。今年はOBの海老蔵が14年ぶりの出演で昼夜4演目全てに登場。例の不祥事以後どことなく精彩を欠いていた海老蔵だが、年改まって心機一転、かかっていた雲が吹き払われたかのようで、めでたい。

主役は「勧進帳」と「幡随長兵衛」。「勧進帳」は芸の丈高く粗削りだが骨太の芸質が生きる。スケールの大きい時代物役者としての質が余人にないことを改めて知らされる。難は必要以上に目をむくのと、後段の酔態のくだりにやや独善が感じられるのと、高く張った声の見事さに比べ中音になるとくぐもること。この弱点は「幡随長兵衛」のような世話物になるとさらに露呈。世話のセリフの生け殺しが身に付かない。にもかかわらず長兵衛役者としての風格は備えている。不思議な役者である。「毛谷村」で端役を付き合えば見事なごちそう役として生きる。

「寿曽我対面」は五郎が松也、十郎が壱太郎という清新な顔ぶれ。海老蔵の工藤は単に年齢とキャリアの差だけではない座頭の貫禄があるのが凡器でない証拠。松也は腰を割って迫る形など修練のたまもので見事だが、若女形として実りを見せ始めていた昨今だけにこの配役は意想外。壱太郎の十郎、米吉の虎、新悟の舞鶴は素質のよさが光る。

愛之助と孝太郎が「勧進帳」で富樫と義経を勤めて、海老蔵の弁慶と見事に三幅対の均衡を作ったのは実力。孝太郎は長兵衛の女房お時でも女房役者としての実力を示す。愛之助は富樫と「幡随長兵衛」の水野で海老蔵と拮抗する実力を見せるが、主役の「毛谷村」の六助は端正なよさの半面、地味な型のせいで損もしている。壱太郎のお園は懸命な努力。上村吉弥のお幸に品格があり、老女役候補の随一だ。27日まで、浅草公会堂。

(演劇評論家 上村 以和於)

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