中核病院、地域連携進む 診療データ使い効率改善診療体制編日経実力病院調査2012

日本経済新聞社が実施した実力病院調査で、病院の診療体制を比べたところ、診療データを詳しく分析し、患者サービスの充実や経営効率の改善に生かしている病院が高評価となった。地域の医療機関と役割分担を進め、医療の質をより高めようとする中核病院の姿が浮かんだ。

相沢病院(長野県松本市)は急性期を中心とした診療体制の特性を評価する「DPC機能評価係数2」の5項目が全国で唯一、オールAとなった。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を2004年度に導入。専門職員が分析した診療データを使って医療の質や経営効率をチェックしている。

患者の平均入院日数は11年度が13.3日で、04年度(15.2日)と比べ2日短縮。病床利用率も93.3%から96.3%に上がった。

相沢孝夫院長は「救急医療は医の本質」を掲げ、02年に北米型ER(救急救命室)を導入。地域の中核病院として年中無休で救急患者を受け入れる。「救急医が疲弊しないよう、救命救急センターに救急科と総合診療科を設け、治療の優先度を判定し、適切な診療科への振り分けをしている」(相沢院長)という。

がん患者の増加に対応して、放射線治療科や化学療法科、緩和ケア科などでつくる「がん集学治療センター」を開設。昨年8月に開いた腫瘍精神科は患者や家族の心のケアにあたる。来年には、患者の負担が小さい陽子線治療装置を導入する予定だ。

同係数2の4項目がA評価の東海大病院(神奈川県伊勢原市)は日本医療機能評価機構の審査も77点(100点満点換算)と高得点だった。猪口貞樹病院長は「救急医療はある程度重症の患者に特化し、軽症者はできるだけ地域の病院に受け入れてもらう。がん診療の拠点病院で周産期のセンターもあり、広域から患者が集まっている」と話す。

同病院は安全への取り組みも熱心だ。現場から報告される事故のほか、ミスを免れた「ヒヤリハット事例」を専任の看護師らが集計し、種類や重軽度別に仕分けて問題点を探る。

医師、看護師、薬剤師など複数の医療従事者がかかわる患者への投薬では、ミスを防ぐため、処方から調剤・投与までの一連の流れを管理する専任の薬剤師を配置した。これらの対策により、11年に患者に起きたトラブルは06年の6分の1にまで減少したという。

同係数2の合計が最も高かった美原記念病院(群馬県伊勢崎市)は脳卒中など神経疾患治療が専門で、カバー率などの評価が低く掲載基準に達しなかった。同機構の認定病院のうち、全国最高の81点だった嬉野温泉病院(佐賀県嬉野市)はDPC制度を導入していない。

DPC制度に詳しい産業医科大(北九州市)の松田晋哉教授(公衆衛生学)は「医療情報が公開されるDPCは診療の標準化を進める。経営のマネジメント指標として利用する病院が増えている」と指摘。「地域の医療ニーズも把握できるようになり、ほかの医療機関や介護施設との連携など地域で求められる役割が明確になる」と話している。

<調査の方法>
▼医療機能評価機構の得点
財団法人日本医療機能評価機構(東京)は病院の依頼を受け、医療の質や安全管理、患者サービスなどの水準を審査する組織。書類のチェックと訪問審査により、数百項目を各5点満点で評価し、全ての項目が原則3点以上の場合に認定している。
日経調査は機構の認定を受けた1702病院が2012年10月10日までに公開した審査結果を集計、分析した。病院の規模による評価項目の差などを勘案し、比較しやすいように全項目の得点を合算したうえで、100点満点に換算した。平均は70.7点。
▼DPC機能評価係数2の格付け
病院の診療体制の特性が分かる指標。厚生労働省が(1)入院期間の短さ(効率性)(2)重症など治療が複雑な患者の受け入れ(複雑性)(3)より多くの疾患の治療対応(カバー率)(4)救急患者の受け入れ(救急医療)(5)がん、脳卒中、周産期医療への貢献(地域医療)――などについて係数を公表している。
日経調査は11年10月時点の1505病院のデータを集計、分析した。大学病院の1群(80病院)、大学病院に準じる機能を持つ2群(90病院)、それ以外の3群(1335病院)ごとに、項目別で係数の値が大きい順に4等分し、上位からA~Dで格付けした。
▼表の掲載基準
機構の得点が上位4分の1以上で、係数2の格付けが1.2群は5項目すべてC以上、3群はすべてB以上の病院を掲載した。

2013年1月以降、がんや脳卒中、心臓病など病気ごとの調査結果を随時掲載します。

[日本経済新聞夕刊2012年12月27日付]