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「美術にぶるっ!」展美術史を総括

2012/12/27

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来し方行く末を思うこの時期にふさわしい展覧会かもしれない。今年、開館60周年を迎えた東京国立近代美術館がこれまでの収集活動を総括し、近代日本の美術の歩みを振り返る「美術にぶるっ! 日本近代美術の100年」展である。

明治以来の美術品が並び、13点もの重要文化財を展示。いかにも総花的、教科書のような内容を思い浮かべるかもしれないが、そうではない。ジャンル別、年代順の枠組みにある程度従いつつテーマを設けて、美術史の理解を助ける補助線を引いている。膨大な作品をシャッフルし、新装して見やすくなった展示スペースに配置し直した。

日本の近代画家らが西洋美術と出合い、融合や衝突の末に生まれた様々なバリエーションが見どころだ。「はじめの一歩」と題した展示室の萬鉄五郎「裸婦(ほお杖(づえ)の人)」は美術館の初年度の購入作品23点の1つ。ゴッホらに倣って描いた胴長の日本女性の体は激しくデフォルメされ、画面からはみ出しかねない迫力だ。その一方には、同じポスト印象派の大胆な構図と色使いを緻密できらびやかな狩野派の感性と同居させた土田麦僊。西洋の「前衛」を逸脱してしまうほどのエネルギーと知的で巧みな受容のありようを比較できる。

同館が無期限貸与作品として所蔵する藤田嗣治らの戦争画に加え、戦争を主題にした作品にも2室をあてた。壮絶な玉砕図とほぼ向き合うように掛けられたのは北脇昇「クォ・ヴァディス」。行くあてのないまま立ちつくし、地平に消える人の群れを見送る男の静けさは、羅針盤を失った現代の私たちの心を打つ。

開国から戦後の経済成長期までを駆け足で追いながら、近代美術館の存在を知らしめる意図もよく伝わってくる。2013年1月14日まで。

(文化部 窪田直子)

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