若者の就職難 少子化なのになぜ?

明日香は「結局、若者が減る以上に、雇用が減っていたのね。産業を育てないと根本的な解決にはならないわ」とまゆをひそめた。

事務所で明日香が報告を終えると、所長が「うちだけでも雇用に貢献しようと警備員を採用したぞ」。驚いた明日香が振り返ると、ネズミを追って猫のミケが走り去った。「ついに猫の手まで借りるのですね」

<外国ではもっと深刻? 一括採用、失業を押さえる面も>

専用列車で上野駅に着いた集団就職の一行(1964年)

実は若者の就職難は日本だけの現象ではない。国際労働機関(ILO)の推計では、15~24歳の失業率は世界全体で12.7%。先進国は欧州債務問題の影響もあり17.5%で、日本の約7%よりも高い。

海外に比べ日本の若年失業率が低いのは新卒者を一括採用しているためだ。最近は「既卒になると就職できない」と評判が悪いが、こうした仕組みがない国々では、新卒者でも経験を積んだ労働者と競いながら職を探さなければならず、なかなか職に就けない。

企業が学校を卒業したばかりの若者を一斉に雇って教育する一方、労働者側も長く勤める「日本型雇用」は、戦前にも一部の企業に存在した。ただ、現在のように広がったのは高度経済成長期だ。

1950年代以降、人手不足の東京や大阪には、東北地方などから大勢の中卒・高卒の若者が集団就職した。当時の東京・上野駅の情景を歌った「ああ上野駅」には、就職列車が登場する。

「金の卵」と呼ばれた若者たちだったが、JRの上野駅前に立つ歌碑は「親もとを離れ、夢と不安を胸に抱きながら必死に生きていた」と伝える。若者にとって就職は、今も昔も人生の難関なのだ。

(松林薫)

[日経プラスワン2012年12月22日付]

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