若者の就職難 少子化なのになぜ?

「企業と学生の間で不幸なすれ違いが起きていました。求人はあるので、仲介に力を入れれば解消すると思いますよ」。明日香が報告すると、所長が首をひねった。「そんなに安心していいのか。もっと大きな経済構造の変化が影響しているような気がするぞ」

明日香がみずほ総合研究所を訪ねると、主任研究員の岡田豊さん(45)が「そもそも、本当に中小企業の求人倍率が3~7倍もあるのか疑問です」と指摘した。計画通り採用する大手と違い、中小は「できればこれだけ採りたい」という希望に過ぎず、どこまで本気なのか分からないという。

「“なぜ中小に行かない”と若者のせいにする風潮がありますが、企業側も仕事や福利厚生の実態を十分開示しないなど努力不足。現状ではミスマッチは簡単に解消しないでしょう」

次に話を聞いたリクルートワークス研究所の研究員、徳永英子さんは「ミスマッチが解消できても、就職環境が良くなるとは限りません」と指摘する。

来年4月には企業に定年後も65歳まで希望者全員の雇用を義務付ける法律が施行される。「外国人の採用が広がり、育児休業制度などの充実で、子どもができても働き続ける女性も増えています」。これらは歓迎すべき雇用環境の変化だが、その分、新卒採用の枠は狭まる可能性がある。

企業の雇う力自体に陰り

労働政策研究所では、所長の浅尾裕さん(59)が「日本企業の雇用吸収力自体が低下し、正社員を解雇できない分、新卒採用を抑制して調整している面があります」と指摘した。かつては不況期でも新卒採用はあまり減らさなかったが、1990年代半ばから景気との連動性が強まった。日本で、長期雇用のメリットが大きい製造業の比率が下がり、パートなどが中心のサービス業の比率が高まったことも影響したとみる。

浅尾さんは「今後、4~5年間は団塊世代が65歳を迎えて大量退職するので採用はあまり減らないでしょう。ただ、その後は採用数の増減が大きくなるかもしれません」と警告する。労働政策研究・研修機構の推計ではゼロ成長が続くと、30年の20~24歳の就業率は63%にとどまる見通しだ。

次に話を聞いた一橋大学准教授、川口大司さんも「低成長が続くなか、日本の雇用構造が変化しつつあるとみるべきでしょう」と指摘する。正社員だけ見ると、過去と比べ離職率はあまり変わっていないが、非正規労働者の比率が増え、社会全体では勤続年数も短くなった。

しかも「原因が低成長自体にあるので、労働政策として打てる手はミスマッチの解消などに限られます。ただ、実証研究が進み、限界も明らかになってきました」と川口さんは明かす。

例えば国が失業者に職業訓練をすれば新産業にスムーズに転職でき、失業率が下がると期待されてきた。しかし、能力が同程度の人を対象に職業訓練の有無と就職の関係を調べると、大きな差がなかった、という研究もあるという。今後の対策として「企業に雇用確保を優先してもらい、低所得者には国が別途、減税と現金給付などで支援するような制度も検討課題になっています」と川口さん。

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