大阪市に住む40代女性のMさんは3年前、寝ている時に脚に不快感を覚えるようになった。脚を動かさずにいられず、寝付けなくなった。マッサージなどで紛らわしていたがどうにも我慢できず、近くの医師を訪ねるとむずむず脚症候群だと診断された。薬を処方され2年通院。途中で薬を増やしたが、脚の不快感は残ったため、専門医を探して受診した。他の薬と組み合わせると症状がほぼなくなり、Mさんは熟睡できるようになった。
■詳しい仕組み不明
この病気について、専門家は「下肢静止不能症候群」と呼んでいる。欧米ではレストレス(じっとしていられない)レッグズ(脚)症候群として知られる。夕方から夜にかけて脚に異常な感覚が起こり、不眠をもたらす。
この病気で生じる脚の不快感の主な特徴は、(1)脚を動かしたくてたまらなくなる衝動がある(2)休んでいるときやじっとしているときに症状が出る(3)脚を動かすと軽減する(4)夜間や夕方に起こったり悪化したりする――の4点だ。
名前から「むずむず」するだけかと誤解されがちだが、患者によって訴え方は様々。「むずむず」のほかに、「ざわざわする」「虫がはうような感じ」「熱い」「重くてだるい」などと説明する人が多いが、うまく言い表せない患者もいるという。
また、睡眠中に脚がぴくぴくと動く「周期性四肢運動障害」を伴うケースも多い。脚だけでなく、腕にも症状が出る人もある。
国内の患者は推定約250万人
この病気は、神経伝達物質の機能障害や脳内の鉄分が欠乏していることなどが関係するとの見方もあるが、詳しい仕組みは分かっていない。50代以降に多く、女性が男性の1.5倍に達する。年齢を重ねるごとに発症する確率も上がるという。
妊婦や貧血の症状のある人、人工透析患者などもリスクが高い。また、この病気の家族がいるかどうかも発症の目安になる。国内患者は推定約250万人。治療が必要な患者はこの半分以下とみられるが、それでも患者はかなりの数に上る。
病院を訪れたら、まず問診で4つの特徴があるか確認する。ただ、「これだけでは座骨神経痛や神経疾患、うつ病などほかの病気の患者との区別が付かないケースもある」と阪南病院(堺市)の黒田健治院長は指摘する。睡眠の専門医でも別の病気を除外するのは難しいという。
そこで、実際に患者に寝てもらい周期性四肢運動障害などを調べる「終夜睡眠ポリグラフ検査」が必要になる。黒田院長は「これで、むずむず脚症候群と判断されれば約8割で薬が効く。そうでない患者は8割以上で効かない」と話す。紛らわしいケースでは、むずむず脚症候群の治療を始め、1カ月ほど投与し効果をみて、最終的に判断する場合もあるという。