塾の無料テストが拡大、どんな狙いがあるの?

大学が狭き門だった1990年ごろ、入試に失敗した受験生は予備校の厳しい選抜試験に挑んだ。今では塾が小学生の頃から学力の高い子を集めて難関校への合格数を競い、その実績でさらに多くの生徒を集める。そこで子どもたちの入り口になるのが無料テストだ。

「塾にも商品やサービスをただで提供する無料ビジネスの波ね」。明日香は事情に詳しい関西大学特任教授、吉本佳生さん(49)に聞いた。一般に無料ビジネスは(1)『よそがやるからうちも』という対抗型(2)情報を顧客に流すルートを作る対個人型(3)さらに会員カードなどを通じ消費者情報を集める双方向型――の3タイプがある。最近の塾業界は短期講習まで無料にするなどなお対抗型が主流で「今後は無料テストなどで集めたデータをどう活用するかなどが課題」と語った。

報告を受けた所長がつぶやいた。「依頼を増やすため無料調査キャンペーンをやろうか」。明日香はあきれた。「それでは今と同じ。今回もただ働きです」

<大学間でも競争激化 専攻名急増、カタカナも多数>

3大学不認可問題について頭を下げる田中文科相

大学を卒業した人を学士と呼ぶが、学位として確立したのは1991年の関係法令の改正による。専攻名を含む学士の種類の表記は自由化され、急増した。

独立行政法人、大学評価・学位授与機構准教授の浜中義隆さん(42)によると、改正前の学士の表記は文学士、工学士など29種だけ。だが改正後は学士の次に専攻名をカッコ書きするようになり、いまでは約700種に膨らんだ。

現代ビジネス学、キャリア・マネジメント学、ホスピタリティ経営学などカタカナを含むキーワードをちりばめた専攻名が並ぶ。そのまま学部や学科の名称になる例も目立つ。浜中さんによると、約700種のうち6割はその大学でしか使われていない専攻名だ。

背景には増加する大学間の志願者の獲得争いがある。漠然と何でもできそうか、逆に専門性を高められると連想させるような専攻名が受験生に受けているという。

過当競争で経営が悪化する大学が目立つなか、田中真紀子文部科学相が来春開学予定の3大学の開設をいったん不認可とした後、認可と改めるドタバタ劇を演じた。文科省は設置認可の審査基準を見直す構えだが、なお波乱がありそうだ。

(編集委員 加賀谷和樹)

[日経プラスワン2012年12月8日付]