塾の無料テストが拡大、どんな狙いがあるの?

同塾は11月に「志望校別入試本番体験講座」と銘打って首都圏の10校程度の有名私立中学を想定した無料模試を小6対象に実施。これは10年ほど前から本格的に続ける。難関女子中の場合、実際に受験する約700人のうち3、4割は早稲田アカデミーの無料模試を受けた小学生。半数は外部生だ。「模試の信用が高まれば塾の評判も上がり、生徒数の増加を期待できるのです」と入吉さんは話す。

偏差値や合否判定の精度向上

西日本を中心に広域展開するティエラコム(神戸市)は小・中学生向けの塾などを運営し、公開模試は原則無料。受験者の3分の1は外部生だ。取締役の村上義太郎さん(45)は「広く集めたデータをもとにした偏差値や合否判定は精度が高まりました」と述べ、さらに教室を増やしていく際に新たな生徒をひきつける材料にする考えを示した。

明日香はうなった。「ビッグデータの扱いが教育産業でも成長のカギなのね」

日本総合研究所の野尻剛さん(37)によると塾や予備校の市場規模は年1兆2千億円くらいとみられ、10年前より10%程度縮小した。18歳人口の減少と大学の増加で、大学を選ばなければ入学は容易になったためだ。実際、文部科学省の資料では12年5月の18歳人口は119万人で、00年同月より2割減った。この間に大学数は2割増えて783校に達した。大手予備校、代々木ゼミナールは12年春入学志望分の大学浪人が8万4千人で、00年春分からほぼ半減したと推測する。

大学浪人の急減で予備校が高校生以下の市場にも本格進出するようになり、生徒の獲得競争は既存の塾を巻き込んで激しくなった。

「無料テストが目立ってきたのも00年ごろからね」。明日香はメモを見返した。

浪人急減、囲い込み早める

代々木ゼミナールは数年前、中学・高校生、小学生をそれぞれ相手にする有力塾をグループに加え、小学校からの“一貫教育”を目指す。ナガセが小学生テストに熱心な理由の一つも生徒の囲い込みとされる。同社はかつて、中堅大学を目指す予備校事業が軸の一つだったが、“上客”だった浪人の急減を受け高校生以下の指導に力点を移した。