2012/11/27

シンクタンクに試算してもらうと…

「経済学ではどう考えてるのかしら」。追手門学院大学教授の奥井克美さん(49)に聞くと、選挙の分析では「投票者が投票によって得られる報酬」=「自分の1票が選挙結果に影響を与える確率」×「自分の支持する候補者が当選した場合に得られる効用(満足度)と支持しない候補者が当選した場合の効用の差」―「投票に行くコスト」+「投票することの市民としての義務感」という式がよく使われるという。

「自分の1票で結果が変わる可能性が高いほど、価値は上がるわけですね」。逆に自分の票が結果に影響を与える確率がゼロに近いと、投票の価値はほぼ「義務感」―「投票のコスト」だけになる。「(交通費など投票にかかる)コストが変わったときに、価値がプラスになる(投票に行く)かどうかを分析する研究が多いですね」と奥井さん。

どうも1票の価値の水準を求める式ではないようだ。困った明日香は、シンクタンクに1票の価値を試算してもらうことにした。

ニッセイ基礎研究所の高山武士さんに意見を求めると「国の予算から計算してはどうですか」と試算を示した。政府予算(一般会計)は年間約90兆円。配分が投票結果で決まると考え、有権者約1億人で割ると1人当たり年90万円。「衆議院の任期は平均約3年なので1回の選挙で約270万円の価値があるといえそうです」と高山さん。

明日香が驚くと、高山さんは「予算の半分は税収ではなく国債という“前借り”で賄われるので注意が必要です」と付け加えた。将来の自分にツケを回しているのと同じで、返済負担は平均余命の長い若者の方が重くなるという。

高齢者、現役世代の2倍か

「世代によって1票の価値に差がありそうね」。明日香は日本総合研究所を訪れチーフエコノミストの山田久さんに話を聞いた。「予算を、受け取る世代別に分けて考えてみましょう」と山田さん。例えば一般会計の教育関連支出は若い世代が受け取り、社会保障給付費のうち年金関連は65歳以上の人が受け取る。

こう考えると、1年間に国から得る便益は65歳以上で1人126万円、65歳未満の有権者で58万円(2009年度)。予算配分の格差を解消するために「人数が減り政治への影響力が下がる若者には1人に1票以上与える案などを検討すべきです」と山田さん。