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エコノ探偵団

100万円以上? 1票の価値、お金に換算すると

2012/11/27 日本経済新聞 プラスワン

 「1票の価値を金額で示してもらえませんか。投票が大切だと言われてもピンとこないんです」。若いカップルが事務所を訪れた。探偵の深津明日香が「難しそうだけど、価値が分かれば投票率アップにつながるかも」と調査に乗り出した。

■選挙・活動費から計算すると1000円

 「候補者は1票を得るのにいくら使うのかしら」。明日香は総務省の資料を調べた。2009年8月の前回総選挙で、東京都の小選挙区候補者の運動費は合計約5億4900万円。総得票数が約688万票なので1票当たり約80円支出した計算だ。全候補者が運動費を法定上限額まで使った場合は約400円になる。

 「候補者にも聞いてみよう」。明日香は前衆院議員の一人に実態を尋ねた。「前回総選挙では自腹で約1千万円用意し、所属政党から千数百万円の支援を受けました」。得票数が約10万だったので1票当たり二百数十円になる計算だ。

 ただ、議員活動は選挙期間中だけではない。「地元事務所の維持費などで年間2千万円近くかかる」という。明日香は電卓をたたき「仮に任期中4年間の活動費も次の選挙に向けた費用だと考えれば、1票1千円くらいね」とつぶやいた。

 「“市場価格”も知りたいわ」。明日香は買収価格を調べることにした。警察庁に問い合わせると前回選挙での検挙事例を教えてくれた。捜査第2課によると「運動員が有権者20人に現金約3千~5千円を渡した」「有権者3人に、投票と票のとりまとめの見返りに1500~6千円相当の牛肉を提供した」などの例があったという。「こういうルール違反はなくさなきゃ」

 事務所で報告すると、所長が「視点が候補者側に偏ってないか。依頼人が知りたいのは有権者にとっての価値だろ」と鋭く指摘した。明日香は「調べ直します」と慌てて飛び出した。

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